チャリをこいで走ろう 思いっきりこいで あの虹が消えてしまう前に チャリをこいで走ろう 一生懸命こげば きっとあの虹に追いつくはず 雨上がりの道路を、自転車で駆け抜ける少年が二人。 年は高校生ぐらいであろうか。 「透!早くしろよ!」 「っせェなァ、無理だって言ってんだろ」 「無理じゃない!」 「ったって和樹、お前この間もそうだったじゃねェか、結局途中で バテやがって」 「そ、それは・・・」 口篭もる和樹に、透はふふんと鼻で笑う。 「全く無理な話だよ。虹を渡る?無理だっての」 「無理じゃない!絶対渡るんだ!」 和樹はこぐのを止め、キッと透を睨み付ける。 とは言っても童顔なため、大して怖くも無い。和樹と正反対で、 大人くさい顔立ちをしている透がやれば、少しは怖いのだろう が。 「じゃ、渡れなかったらどうすんだよ?」 ここまで付き合ってやったんだ。と、透は言う。 和樹はうっとつまってから、ハンドルを握り締め、うめいた。 「う〜・・・じゃ、じゃあ、ジュース奢るよ・・・」 「却下」 「え〜何で!?」 「そんなんじゃダメだね、明日の学食のカツ丼奢りな」 ニヤリと笑う透は、またゆっくりと自転車を漕ぎ出した。 「・・・今月ピンチなのに・・・バイト代もまだ先だし・・・」 そして和樹も再び自転車を漕ぎ出し、透に並ぶ。 ふと、透は疑問に思う。 「なぁ、何で急に虹なんか渡ろうなんて思ったんだ?」 「・・・何でだよ」 「いや、ここまで付き合ってやったんだ、それぐらい聞いても良い だろう」 ふぁ、と欠伸をしつつ、透は尋ねる。 和樹は首をひねった後、ポツリと言った。 「・・・雨が」 「ァあ?」 「雨が止んで、その後、虹が出ただろ?」 「そりゃあ、太陽が出りゃ虹も出んだろ」 「まぁ、聞いてよ。で、綺麗だなって思って、見てたら、じっとして らんなくて」 「俺を引っ張って行こう。ってか」 「うん」 にこやかに言い放つ和樹。 透は頭を抱え込みたくなる。 「わかってるんだ」 「何が」 「俺だって、虹を渡りたいなんて夢物語にしか過ぎないことぐら い」 ふいに、和樹の表情が曇る。 キキッとブレーキをかけて、再び止まる。透はその一歩進んだ ところで止まる。 「ほら、最近さ、色々あっただろ?テストとか、行事とか、多分、 そう言う事に飽き飽きしてたんだと思う。思いっきり気分転換 して、スッキリしたいんだ」 真剣な顔の和樹に、透はため息をつく。 「・・・ンなこた分かってるよ。最近お前調子悪かったからな、 これでも、お前の親友やってんだからな」 そのまま、ふんっと鼻で笑い、透は再び自転車を漕ぎ出す。 和樹は嬉しそうに、「おう」とその後についていく。 「絶対、虹渡るぞ!!!」 「できるもんならな」 「できる!!!」 「無理だっつーの」 「できるったらできるんだーーーーーー!」 二人の口論と、そして笑い声が、遠ざかっていった。 チャリをこいで走ろう 思いっきりこいで あの虹が消えてしまう前に チャリをこいで走ろう 一生懸命こげば きっとあの虹に追いつくはず そして あの虹を渡りに行こう END |
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