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”竹村さんとこのお子さんですって”

―――俺のことか?

”可愛そうにね、ご両親二人とも無くなって”

―――あぁ、そうか、父さんも母さんも・・・

”それにしても誰が引き取るの?”

―――・・・

”私は嫌よ。自分の家の家計でも精一杯”

―――・・・

”あら、家だって無理よ。あんな無愛想な子。それに、なん
 かおかしいわよね、あの子”

―――うるせぇ・・・

”えぇ、そうらしいわね。今回の事故も、あの子のせいじゃな
 いかって、噂よ”

―――俺が何をした?

”怖いわねぇ・・・”

”ホントねぇ・・・”

 何だ、その哀れむような目は。
 俺は一度だって自分を不幸だと思った事など無い。
 なのに何だ?
 その蔑むような目は?

”可愛そうに・・・きっと引き取り手もいないんじゃない?”

 うるさい

”皆嫌がってるらしいわよ。疫病神だって”

 うるさい

"気味悪いわねぇ”

 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいウルさいウルサイ!!



□■□■□■□■□■□■□■□



 見なれた天井が目に入る。

―――夢か

 大分うなされていたようだ。体がダルイ上にパジャマがび
しょびしょになっている。額にも汗が光っている。
 ひとつため息をつくと、岳はベッドがら降り、カーテンを開け
る。
 暗い部屋に入る朝日が眩しい。
「良い天気だ」
 空気の入れ替えのため、岳は窓を開けたまま、リビングへ
と出て行く。


 とんとんとんとんっ
 規則正しい音がリビングに響く。
 キッチンからのようだ。
 キッチンに入ると、なにやら良い匂いが漂ってくる。
「望。来てたのか」
「あぁ、岳。おはよう」
 にっこりと微笑むのは岳より少し背の低い、少年。
「何やってるんだ?」
「朝ご飯。どうせ岳、パンとかですませちゃうんだろうと思っ
 てね。作りにきたんだ」
 ニヤリと意地悪く笑うと、望と呼ばれた少年は作業を再開
する。
 今日の朝ご飯は味噌汁に、卵焼き、そして焼鮭らしい。
「美味そうだな」
 岳はコップに牛乳を注ぐ。


 竹村 岳。18歳。
 趣味、釣り、レースゲーム。
 特技、歌う事、球技系全般


 どこにでもいる普通の、青年と呼ぶにはまだ少し早い少年。
 彼が少し人と違うのは。


 万物を斬る刀を、その内に納めているのである。


 奥羽 望。18歳。
 趣味、パソコン。
 特技、上に同じくパソコン、家事全般。

 こちらもどこにでもいる普通の少年である。
 彼が少し人と違うところは。

 異世界から、魔物を召喚できるのである。
 

「あぁ、そうだ。岳」
「あ?」
 望はテーブルに朝食を並べていく。
「今日、仕事入ったぞ」
「ふぅん、どんな?」


 彼らはある仕事をしている。
 ”何でも屋”と言うヤツだ。依頼されれば殺し以外なら何で
もする。
 しかしそれは表向きだけで。
 彼らには探している人物がいる。


「うん、ホラ、同級生のメグちゃんいただろ?」
「あー、うん、まぁ」
「また、どーせ覚えてないんでしょ?」
 クスクスと、望は箸を渡す。
「いーじゃねーか、で?アイツがどうかしたのか?」
「あー、うん、あのね、テレビが壊れたんだって・・・」

 間。

「で?」
 岳は思いっきり嫌な顔を作り、望を睨み付ける。
「うわぁ、予想通りの反応」
 大げさに困って見せて、望は椅子に腰掛ける。
「いただきます・・・何だよ、そのテレビを直せとでも言いたい
 のか?」
「当たりー♪いただきまーすv」
 あはーvと、頬に人差し指を当てて可愛子ぶってみるが、
岳にジト目で流される。
「はぁ・・・あのなぁ、いくら何でも屋っつっても・・・」
「ストーップ!」
 文句を言おうとした唇に、望の人差し指が押し当てられる。
「ちっちっちっ、そんな小さい仕事面白くねぇ!とでも言いた
 いんだろうけど、こういう仕事だからこそ頑張るんじゃない
 か!」
「何で」
「暇だから」

 再び間。

「はぁ・・・」
「わかってくれた?」
「ああ、嫌というほどな」
 もくもくと口を動かしながら卵をつつく望。
 岳は降参だとばかりに、ご飯をかきこんだ。
「おかわり」


□■□■□■□■□■□■□■□


「わぁ!ありがとう岳君、望君。本当に何でもできるのね」
「いやいや、良いんだよ。昔のよしみだろ」
「俺は不服だ」
「うっさいよ、岳」
 和やかな雰囲気が、部屋を包む。
 久しぶりに、学生に戻った気分だ。
 しかし
「・・・っ・・・」
「岳?」
「岳君?どうしたの?」
 急に、岳が頭を押さえてしゃがみこむ。
「くっ・・・」

 だっ
「岳!?」
「岳くん!?」
 岳が部屋を飛び出す。
 向かうは・・・――――――――屋上!?


「はぁっはぁっ、岳、どうし、たんだっ!?」
 屋上にたどり着いた望は、先にたどり着いていた岳を見て、
驚く。
「お前・・・は・・・」

「やぁ、久しぶりだね」
 望が驚いたのは岳を見てではない。
 その目の前に立っている男を見たからだ。
 岳は忌々しげにはき捨てる。
「会いたかったわけじゃねぇけどな」

 男は、長身でスラリと長い手足。モデルでも十分な体型で、
黒の革パンに、黒のハイネックと言った格好である。額には
サングラス。

「そうかい?僕はすごく会いたかったけどね」
 にっこりと笑う顔。
 しかしそれとは反対に怒り狂う岳。
「っざけんな!テメェ、俺に何したか覚えてんのか!?」
 そんな岳を見て、面白そうにくつくつと笑う。
「うん?今僕が君に向けて送った気で、君が苦しくなったこと
 かい?」
「そんな事じゃねぇ!!!」
 岳が、叫ぶ。
 望は、苦しそうに彼を見ているしかない。


「テメェ・・・」
「いや、今日は君と戦う為にきたんじゃないよ。ただ、様子を
 身にね。・・・もっとも、まだ君らが僕に勝てるとは思わない
 けど」
 にっこりと笑うが、目は笑っていない。


「岳くん!望くん!」
 一足送れてやってきた高い声。

「おや、邪魔が入りましたね。それでは、またきますよ。」
 黒い男は、ふわりと消えた。
「待て!高村!!!」
 必死に叫ぶ。

 しかし、岳の記憶はそこで途切れる。