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おたからバスターズ!

〜序章〜



「ココはドコ・・・?あたしは・・・誰?」

 とりあえずボケてみたが、一応自分は誰ぐらいは覚えている。
 あたしは樹竜 美和(きりゅう みわ)。
 ごく普通の高校2年生。
 ・・・なんだけどさ、何、この見知らぬ土地に見知らぬ生物。
 見渡す限りの荒野。
 吹き抜ける風。
 そして何、この、格闘ゲームとかRPGとかに出てくるような格好
は。

「・・・」

 とりあえず、整理してみよう、何故こうなったのか。
 確か、家、そう、家にいたハズなのよ。
 幼馴染―――一斗と一緒に。









「・・・だったんだよ!!」
「あははははは!」

 一斗がわけのわからんボケを飛ばす。
 あたしは腹を抱えて笑っている。
 一斗―――国葉 一斗(くにば かずと)はあたしの幼馴染で、
小さいときからずっと一緒だったりする。
 あたしの母親も父親も同じ会社に勤めていて、家に一家が全員
そろうことはほとんど無かった。
 でも、一斗と、一斗の両親は本当に良い人で、いつも一緒にご
飯を食べたり、泊まりに行ったりしてた。
 一斗とは何でも話せる、言わば異性の大親友だ。
 誰かが、「男女の間で友情は成り立たない。」なんて馬鹿なコト
を言っていたけれど、それは絶対嘘。何故なら、あたしと一斗が
そうだから。証拠に、恋愛話から何から、相談するのはいつも一
斗にだから。一斗にも、何度も恋愛の相談されたし。
 まぁ、そんなこんなで、あたしと一斗は例によって、あたしの家
でくつろいでいるわけだ。
 しかし今日はいつもと違う。
 今日、8月21日はあたしの誕生日だ。

 ピンポーン

「「来た!!」」

 二人顔を見合わせ、叫んで玄関に走る。

「はーいはいはい!」

 勢いをつけて開けたら、郵便やさんが驚いた顔であたし達を見
つめた。

「あ、あはは、すいません」

 空笑いで返して、指示されるままにサインをして、軽く頭を下げ
て扉を閉めた。

「何だろ?」
「うん・・・あっ、母さん達からだ!」

 差出人の名を見れば、樹竜 信士・碧の文字。

「覚えててくれたんだ」
「当たり前だろ、娘の誕生日だもん」

 ちょっとグッとくるものがあって、思わず涙ぐむ。
 一斗はそんなあたしをちょっと笑って、部屋に促した。

「何かなぁ?」
「開けてみてよ」

 うん、と頷いて、ぱりぱりと外装を剥がす。
 出てきたのは、グレイのダンボール箱。
 メッセージカードが添えられていて、
 「HAPPY BIERTHDAY TO MIWA」
 の文字。
 また柄にも無く涙ぐんでみたりして。
 そして歪む視界の中、ダンボール箱を開け・・・固まった。
 たっぷり1分。

「・・・・・・・・・・何コレ」
「・・・・・・・・・・何だコレ」

 お前誕生日プレゼントにそれはないだろう、と言うなかれ。
 あなたもコレを見たなら、絶対あたしたちと同じ反応をするはず
である。

「・・・・・・・・・・・げーむ?」
「・・・・・・・・・・・か?」

 中に入っていたのは、良くスキーの時につけるような怪しげなゴ
ーグルらしきものが2つと、ゲームの本体らしきもの、そしてカセッ
トらしきものが一本。
 もう全部「らしき」ものなのだ。
 何故なら、見たことも無いような形状だったから。

「怪しスギ」
「同感」

 ため息をついて、「まぁ、あの母と父だから」と結論付ける。
 あたしは父も母も嫌いではない。
 現在、両親はアメリカに長期出張中である。
 普通、子供を放っておくような親は好かれないものだが、彼らは
いつもあたしの心配ばかりして、何度も一緒にこいと言われた。
 でも、あたしはそれを断った。
 日本を離れたくなかったし、何より友達と離れたくなかったから。
 無理を言っているのはあたしの方だったりもするのだ。
 だから、惜しみない愛情をくれるあの人たちが、嫌いじゃないど
ころか、大好きだ。

「・・・」

 しかし、コレはないだろう、コレは。
 多分、勤めている会社の新製品か何かなのだろうが。

「・・・やってみる?」
「・・・やるか」

 ニヤリと笑いあって、いそいそと接続を始める。
 さっきから文句ばかり言ってるが、実はあたしはこう言うのが大
好きだったりする。
 なら文句言うなよ、ってお思いだろうが、あたしはひねくれ者な
のである。
 ・・・素直に気恥ずかしいと言えないところが情けない。
 律儀に付き合ってくれる一斗もまた同じ。

「えー、と、”おたからバスターズ”日本語版・・・このゲームは、ウ
 ィルスに教われた五つの街を救い出し、最後の”毒王者”ウィル
 スキング?まんまねぇ。・・・を、倒して行くゲームです。さぁ、あ
 なたがこの世界の主人公となるのだ!・・・うわー、ありきたりー」
「まぁまぁ、わざわざ送ってきてくれたってことは、何か他のとは
 違う機能があるのかもよ?」
「うーん・・・」

 そうねぇ・・・と、あたしはチラリとそちらに目をやる。
 一斗はもう興味津々と言った感じで、目を輝かせている。

「・・・やるかー」

 もう一度そう言ってやると、「やったー!」とばかりに、一斗が笑
った。
 あたしは一斗のこの顔に弱い。
 男ながらにして、お願い攻撃を身につけるとは・・・

「で?やり方は?」
「うん、えーと、まず、このゴーグル(らしきもの)をつける」
「ほいほい」
「そうそう、んで、次に、ゴーグル横についたボタンで職業選択・・
 ・どっかで聞いたような項目ねぇ・・・」
「はは、まぁまぁ。えーと、コレ、かな?」

 ピッピッと言う機会音と共に、職業の一覧がゴーグルレンズに
表示された。

「んじゃあ、俺”火気取扱術士”」
「なんか消防士みたいな名前ね・・・じゃあ、あたしは・・・」

 押そうとすると、勝手に選択肢が動き出した。

「え、え?」

 そして、剣士に矢印がとまったと思ったら、勝手にエンターとな
った。

「何よこれー!」

 魔法使いとか、そう言うのが良かったのに・・・
 ぶつくさ言ってたら、一斗がいきなり本体の決定ボタンを押した。

「ちょっ、かっ・・・!?」

 一斗!と叫ぼうとして、それは最後まで紡がれる事は無かった。
 閃光が走り、あたしたちの意識は飛んだ。













 で、この様である。
 えーと、せ、結局あたしは何でココにいるわけ?
 あー、ここはなんだでこれはここ?
 そんなこんなでこれここどこなんだでここ?
 ああああああああああ!
 わけわからん!

 あたしの頭の中は混乱しまくりで、もうさっきから暴れ回ってる
わけだが。

「ちょっと一斗!あんた何でそんなに普通なのよ!?]

 そう、さっきからその混乱っぷりを楽しそうに見てるヤツ。
 あたしが問い詰めると、やっぱり笑ってこう言った。

「えー、だって美和見てると面白くてさー」

 こ、こひつ・・・

 こめかみをピクピクさせながら、あたしは一斗を睨む。
 まぁ、ここで一斗を苛めたところで問題の解決にはならない。
 あたしはまだ働かない頭を、なんとか総動員させて、考えてみ
る。

「・・・やっぱり、あのゲームっぽいのが原因みたいねぇ」
『ぴんぽんぴんぽんぴんぽ〜ん♪さっすがあたしの娘ねぇ〜♪』
「でっしょー?伊達に一人暮ししてないわよ!」
『もう、すっかり大人になっちゃって〜v母さん嬉しいわ〜v』
「まかしといてよ、だってあたしももう高校2ね・・・ん・・・」

 と、そこまで言って、あたしはくるりと振り返る。
 そこに何故か浮いている小型テレビ。
 そして何故かそこに映っている母さんの顔。
 母さんはにっこり笑った。

『ハローvご機嫌いかが?』

 あああああああああああああああああああああああああああ!

 そこに映ったのは紛れも無く、あたしの母さんだった。
 め、眩暈がする・・・

「・・・で?」

 あたしは母さんの映った小型テレビをつかみ、顔を近づけ、睨み
付ける。

『み、美和ちゃん、落ち着いて、ね?』

 冷や汗を流す母さんを見つつ、あたしの眉間の皺は深くなるば
かり。

「ここはどこなの!?なんであたしたちココにいるのよー!!」

 ゆっさゆっさとテレビを揺らし、あたしは叫ぶ。

『美和っ、美和っ、話を聞いてー!!』 
 
 母さんももう涙声である。
 仕方ない、聞いてやるか。

「で?なんなのよ?」
『あのね、話すと長いんだけで、そのゲームの中に正体不明のウ
 ィルスが入っちゃったみたいなのよ。生憎外からじゃあ、そのウ
 ィルスは機密すぎて、チェックしただけじゃあわからないの』
「ちょ、ちょっと待ってよ!そのゲームの中って・・・じゃ、じゃあココ
 はゲームの中ってこと!?」
『あたり〜♪』

 そうだ、こう言う人だった・・・
 と、言うか、現代の科学がそこまで進歩していたとは・・・

「で?」
『私たちは開発する側だから、中に入ってココを離れるわけにもい
 かないし、でもそのデータを失ったら、コピーも無いから今までの
 開発してきたものも全てパァ』
「・・・まさか」
『そうそのまさかvだから、あなたたちにお願いしようかと思ってv」

 あー・・・頭痛い・・・

『ほら、だってあなた達こういうゲーム好きでしょ?楽勝よ〜・・・
 ね?』
「・・・あたしたちがやらなきゃ、会社の人に迷惑がかかるのね?」
『え!じゃあ!』
「わかったわよ、やってやるわよ」
『きゃ〜vさすがあたしの娘〜v』

 そんな母さんとあたしのやりとりを黙って聞いている一斗。
 自分が割り込むと話がややこしくなるのがわかっているらしい。
 昔からそうなのだ、この男は。

「そんじゃま、いっちょやってやりますか!」









 かくして、あたし達の、普通じゃないゲームが始まった。










続く