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衆生貧苦すれど、弥勒来臨未だ遠し。
天、天狐を下天に遣はす。
其天狐金華也。是即ち敬すべし。尊ぶべし。
天狐崇すれば、慰世撫民、養生安楽。

弥栄、弥栄。





















だんッ、
と床板を蹴る音に眼を上げれば、
人が斬られていた。


暴れまわる一対の脚がある。

だ、だだだだだだだんッ、だんッ、だ、と踏み音すらも乱れ。
無茶苦茶な所作、動き、
剣の間合いも糞も知るか、とばかりに乱す脚が、場を喰い荒らす、奔騰に。
そいつが奔った後に、ぐらり、揺らいで倒れる人の躯。
ぶわり、揺らいで倒れた後は痙攣する、
骸になる直前、体温を喪いかけている体は瘧のようにびくびくと収斂する。
だがその痙攣も踏みにじられる、
斬った奴の足が傲岸に踏む、その躯を。
弱った肌など踏み潰し、踏み越え、奔放に自在に脚は暴れ狂う、
だ、だだだ、だん、
床板を暴れ蹴りまわっては撥ね、どん、と踏みしめ、
がっ、
と蹴りつけては不意に翻り、駆ける足裏。


斬っているあの男は誰だ。
あの足裏の持ち主。


黒い裾、
その合間から見える白い脚。
しろい、
眼を疑うようにしろい膚、
濁りひとつない膚が脚のかたちをして自在に床を蹴り撥ねている、
踝の薄い色すら淡い、しろい脛。
だがその脛は自分が斬り伏せた体躯が噴いた濁った血で汚れる。
ぬちゃ、と血糊を粘らせ、
また足は床を踏みにじる、
蹴る、
奔る、走る、斬る、斬っては踏み止まらず、
一瞬たりとも止まるのが厭だとばかりに次へ次へ次へと狂ったように踊り狂う、
寄越せ、骸をもっと寄越せ、と言うかのように。
点々、散る、赤い足裏の跡。
汚れた血。泥。
穢らしく床は陰惨。


ひとごろし。



狭い庚申堂は地獄と化す。

まあ、庚申堂とはいえ、此処に集まった奴らが遣っていたことといえば。
庚申講の訳が無い。
博打。
隠れ博打。
此処は近在で知られた、隠れ賭場だ。

深更、三々五々、寄り集まっては博打に耽っていた地下者、博徒、極道、やくざ者に身崩し、
闇に乗じる獣か化物かのように集まっては、酒を呑み、てんでに肴を喰らい、
懐に入れてきた外道銭をざんざと山に積んでは、盆を囲んで下卑た賭け事に興じ。
山賊か夜盗かと変わり無い無法者共、首に値が付けられて追われている者、
そんな奴らが泣きおらび喚き吠えながら、
斬られていく。
ゆらり、扉を開けて入ってきた影に。
最前、戸口に立っていたひとつの影に。

黒ずくめの着流し、目深に被った黒菅笠。黒い帯、黒い長刀。
旅装。
身ひとつしか無い、放恣放埓な流れ者の軽々しい旅姿。
草臥れたその風体からして、おそらくは博徒、極道、
喰い詰めた野侍。
大方、そんなところだと高を括って、
ぞんざいに、おう、初顔じゃねえか、何処の誰でィ、と盆持ちが声をかけた途端に、
これだ。

一瞬後、奔った光。

それを、刀身の閃く鮮烈な動きだ、
しかもあやまたずに胴元の太い腹をざくり、斬りやがった時の光だと察したのが、
この場にどれだけ居るか。


ざ、
ざざざざざざざぎぎぎぎひいいぃッ、
絹の竪布が力任せに裂き斬られる音に、血が噴き上がる汚らしい音、
どう、と倒れながら聞き苦しく迸る叫喚、
おめき声、
だらァッ、手前、何さらしてくれよんじゃッ、
西の賭場崩れでも混じりこんでやがったか、口汚い浪花言葉の罵声。
それも、ひぃ、ひいい、と薄みっともない金切り声を上げ、這いずり逃げる音に掻き消される。
場は乱れた音で塞がれる。
見苦しい色で塗りたくられる。
油染みた襖、黄ばんだ壁に噴きかかる血。
そこへ、燭台が倒れ、火皿が砕け割れれば、めらめらと炎の舌は壁床を這う。
火は血を吸った袖すらも焼く。
人脂の燃える臭い煙。



・・・修羅じゃねぇか。



壁にだらしなくもたれたまま、瞼を跳ね上げることすらせず、
ゾロは場を見ている。見渡している。

よう、手前も賭けるかよ、そう訊かれても、
ハ、もう金が無ェ、
先刻、そう応えた格好のまま。
懐手を崩しもせず、胸に抱いた刀三本。
傲然と、壁に背を預けたまま、惨事の場を見渡している。
眼に見えるは、酸鼻、惨状、
地獄絵図。


さっきまで丁だ半だと銅鑼声を張り上げてやがった極道博徒共が、
慄き、怯えて逃げ惑う。
いや、逃げようとして腰を抜かし、脅えと慄えで立てもせず、
きょろきょろと不様に周囲を見渡し、
ぁあ、おうあァ、と訳の判らぬ阿呆声をだだ洩らす。
声高に悪業の自慢話をしていた威勢はどこへやら、
小便を洩らしてずるずるべったり、床をいざる。
手爪を床板のささくれに突きたて、這う。

少しは気概のある者は匕首を抜く、必死に構えて喚いてやがる。
だが、無駄だ、
とゾロは冷徹な眼で視る。

あの人斬りァ、そんな不様な屁っぴり腰でどうにかなる相手じゃねえ、
手前ら、残念だが、運が悪過ぎた。
念仏でも唱えた方がまだ早ェ。
だんびら抜いたからには、あの黒ずくめァ、手前の事を斬るだろう。
見逃しやしねえよ、このとんでもねえ人斬りは。
あの動きのキレ、見やがれ。

そうだ、とんでもねえ、
こいつはまってくもってとんでもねえ相手だ、

最初の一人を斬ると同時に燭台を蹴り飛ばしやがった。
それからも次々に蹴ってまわって、とうとうこの火事だ。
その火が廻る方向すら上手に使って手前らを追い込む相手だ、
敵う訳が無ェだろうが、この田舎極道共。
極道張るなら、とことんまで張らねえか、
狎れ合いで気ィ緩めた手前らが甘い。悪い。
喰らって生きてると嘯くなら、もっと強ェ奴に喰らわれる日が来ると肚決めてかからねえか。
そうだ、例えば、コイツのように。
この人斬りの眼を覗き込んでみろ、
俺の座った此処からじゃ見え無ェが、斬られる手前らからは見えるだろう、
地獄に堕ちる前、冥土の土産に見てくといい、
そいつの眼ェ、多分、獣みてえな色してやがる筈だ、
生死なんざ常時賭けの盆に張ってる気違いの眼だ。
俺と同じ。


めらめらと廻る火勢、床にぬめる血、
気づけば、堂の中は紅蓮の色だ。
人脂、
血の中から熔け流れてはぬらぬらと足元を掬う粘つくそれに気をとられ、
不様に転び、動転して喚く馬鹿共。
そこを、しろい足が蹴り飛ばしてく。
ざん、と情け容赦の無い刃をぶっ刺してく。
でろり、その人脂をねばらせた刀に、炎影が光る。

修羅鬼のような。

凄ェ。


壁にもたれたまま、その男をゾロは見る。
アレぁ、何だ。
鬼か。
夜叉か。
化物か。
まさか、アレが人の訳があるか。
田舎とはいえ、街道筋で知られた悪名高い奴らばかり、
そいつらをざんざんとまるで棒切れのように斬ってくれやがる、
しかもあの動き、
あの目茶苦茶な間合いでだ、
あの脚。あの動き。
ありゃ一体、どういう凶つ技だ。
剣道場でヤットウやってた動きじゃあんなに柔らかくならねえ、
そうだ、柔らかい動きだ、道場剣法でも喧嘩剣法でもああはならねえ奇怪な柔らかい体動、
そのくせ、だが、
とんでもなく豪胆。剛力。
なんて野郎だ。
自分自身もこの地獄絵図に動じもしない修羅の癖をして、
ゾロは狭い堂の真ん中で暴れまくる姿を見る。
どっかり、腰をおろしたまま、不躾なまでの直視、野放図な膝立座りのまま、
羅刹のような姿を嘗めるように見物する。


その修羅鬼が不意に言う、

「・・・首七つ、頂戴した」。


存外と低く、そのくせ、甘さまで含むような滑らかな声。
ひとごろしの声に、堂中はしんとなる。
そのしんとした中を、まるで千両役者のようによく通る、
不埒な嘲り笑いを含んだ声が恫喝していく、
刀と同様、不思議に奇怪にやわらかな声。
声まで物騒な物柔らかにできてやがるか。
修羅鬼。夜叉鬼。


「牛鬼の佐平次一味の首、計七つ、この天孤が貰い受ける。
 二年前の江戸薬研掘町の薬種問屋への夜盗の上、奉公の子らも入れての十七人殺し、
 その他山のような畜生業の咎だ。
 汚ねえ素ッ首貰っても仕方無ェが、せめてもの情けに天道に晒してやるから有難いと思いやがれ。
 天道の浄白を受ければ、手前等悪党の糞に塗れた輪廻転生の劫輪も少しは軽ィ、
 さあ、一緒に首晒されてえ奴はその首置いてけ、
 手前で置けねえ首なら俺が斬ってやるから寄れ、
 それもできねえ腑抜けなら」


相変わらず、堂の中でも取らないままの黒菅笠の下、
白い顎、その上の薄赤い唇がにたりと歪む、


「浄財でも喜捨して行きやがれ、この屑共」


ずい、と伸びた白い掌。









































藪椿がわさわさと茂った細い道を抜け、これまた細い鳥居、
塗りの剥げた赤鳥居をいっぽんくぐり、夜を歩く。

街道から外れた脇街道、その道からも外れた野道里道、
さらに其れからも外れた、山へと這い上る獣道めいた細道を通じて行けば、
やっと道先に堂が見えた。
見えると言っても暗がりだ。
黒い影がむっすりとわだかまって固いところ、その辺りが堂だと見当をつけ、
下生えの草や落ち葉を踏みしだいて歩く。
人の歩かない道は柔らかい土のまま、道のかたちも失くしかけている。
まあ、よくもこんな場所を見つけたもんだ、と呆れながらひたひたと暗がりの中を歩く、
緩やかな勾配のついた細道、椿の枝がわさりと邪魔してくる影道をゆく。

椿、一重の藪椿が、そこらに点々と花を落している。

この暗がりにどうして見えるものか、
赤い色だけが濃い土苔の暗緑に乗っているのが見える。
ぽつん、と枯れ朽ちもしねえで、そこだけ光が凝ったように、赤い。
誰が見るでもない場所で見事に咲き揃った椿が、ぽと、ぽと、と無音の夜に花を零す。

椿の花は首斬り花だ。

首ごとぽとり、かたちを崩しもせずに、真っ逆様に堕ちる花。
その様子が、まるで斬首のようだと見られる花。
武家には忌み花。
花の盛りを過ぎれば、樹の根元は全体、この赤で染まるほどになるだろう。
そうだな、あの庚申堂の床のように。
思い出した血と火炎の赤が眼裏に帰り、
ゾロは、ふん、と唇と歪めた。
この里の連中がこの稲荷堂を朽ちさせる気が判る。
こんな夜にこの椿を見れば、気の弱い奴は腰を抜かすだろう。
樹の下一面、血の海にしか見えねえよ。
艶麗なこときわまりねえが、ふしだらで性悪な赤じゃねえか。
昼見りゃまだしも、闇夜にでも見てみろ、とろけださねえのが不思議なくらいの赤だ。
いや、蕩けだす、よりもむしろ、燃え熔けだすか?
熱蝋のような赤い花弁を、ぐしゃ、と足の下に踏み潰す。
足裏に、あの庚申堂の血のぬめりがふと蘇る。



朽ちかけた稲荷堂は小さい。


がたり、ぎぎぎ、と建付の悪い扉を開ければ、中は真暗。
何も見えない泥のような闇。
無音。


「邪魔するぜ」


人の気配も無さげなその闇の中へ、ゾロは声をかける。
ち、と舌打ちの声が聴こえた。


「本当に邪魔だ。
 入って来ンじゃねえ」


慳貪な声が忌々しそうに返ってくる。
心底、邪魔臭そうなその声にも構わず、ゾロはずい、と堂の中に入った。
どうでも入ってくるなと言うなら、問答無用で扉の内から刃を突きつけてくる相手だとみたが、
それをしないところ、どうやら無駄な殺生はしない性質らしい。
まあ、面倒臭ェから、というだけの理由からだろうが。それもまた睨んだ通り。
どうせ荒れた堂だ、と土足のまま無作法に上がりこむ。
神仏への畏れだ何だ、そんな殊勝なものは持ち合わせて居るはずも無い。
同様らしい相手も、土足のままで闖入している。
我物顔で腰を下ろした菰の上から、じろりとゾロを睨み上げた。


「邪魔だ、って言ったろうが。
 耳ァ、無ェのか。この糞侍」


伝法な言い草でずけずけと言い放ち、何の用だ、と不機嫌に付け加えた。
用ァ、特に無ェが、とゾロも無愛想に言い返す。
用ァ無ェ、ただ、狐の面、見に来た。


「この夜更けに稲荷拝みかよ」


そら、其処に居やがるらしいから好きなだけ拝むがいい、
嘲弄する指が不躾に射すのは、円鏡がいちまい置かれた方寸だ。
白木の方寸に、朽ち枯れた榊らしい枝、かわらけ、
神を象るそれらの具物。
顎をしゃくって事も無げにそれを指し、稲荷堂の堂内にどっかりと座り込んだ不敬者。
天道だなんだと洒落くさいことを吐かした口を持ちやがるくせ、
座り方といえば股を開いた無作法な胡坐だ。
せせら笑う男をゾロは見下ろす。


「稲荷に呉れてやる油揚げなら持たねえな、
 俺が見に来たのは手前だよ、天孤」

「俺を拝みにか。
 なら賽銭でも持ってきたかよ」


ほら、寄越せ。
賽銭箱ァ、無ェが。

ぬけぬけと。
言い放った不遜な唇を歪ませ、男が掌を向けやがる。
あの庚申堂で見た、しろい掌。
全体、しろい男だった。
抜けるようにしろい、とはこの事かと思わせる白膚。
そして眼底が抜けるように透ける青い眼、金糸のような金の髪。

異形。

黒菅笠に隠されていた顔貌を拝みに来れば、こういう面が隠れてやがったか。
思わずゾロはまじまじと、昏がりにも光るようなその姿を見る。
それが気に喰わなかったらしい。
ぎろり、白眼が向けられた。


「なーにじろじろ見てやがる、長崎の丸山あたりで遊べば俺みてえなのは時々居るぜ?
 阿蘭陀人との相の子を見るのは初めてか? この田舎侍。
 金髪碧眼の陰間が欲しけりゃ、他所へ当たれ。
 俺のケツは売りモンじゃねえよ。見ンな。減る。
 ったく、商売の邪魔だ、手前みてえな野郎を後ろにへばり付かせたままじゃ胸糞が悪ィ。
 仕事の合間中、べったり後ろを尾けやがって、
 ふざけんな、畜生」

「アレが商売たァ、大概ェ奇ッ怪な商売があるもんだな」


べらべらと鉄火に捲くしたてる薄い唇の横面を叩くように短く言ってやれば、
ハ、何が悪ィ、とにやり、唇の端が持ち上がった。

なにが天孤だ。

金の髪の碧い眼の見てくれとは裏腹に、口を開けば外道なまでの男くささを匂わせるその面。
悪びれもせず、にやにやと悪い笑いを浮かべている男は、胡散臭いという言葉を地でいく。

あの庚申堂での人斬りの後、ゾロはこの男を尾けてみた。

とんでもねえ男だった。

凄まじい殺戮に震え上がった奴等から有り金を全て巻上げ、
賭場の賭け盆の銭まで根こそぎ掻っ攫い、
それを懐に突っ込んで首をごろりごろりと縄で括りひっ掴んで、宵闇に消えていく男。
どう道をとるかと思えば、獣道だ。
猟師ですら通らないような山道崖道を、獣のような速さで夜っぴって歩き、
夜明け前、払暁の闇にまぎれて宿場へと降り。
宿場で、さて、何をするのかと物陰から見ていれば、
不意に、辻にどさり、生首を置いた。
そしておもむろに矢立と紙を取り出し、さらさらと何かを書き付けて生首に咥えさせ、
そして、
まだ寝静まっている辺り、飯炊きも起き出さねえ時刻の家々に向かい、




「狐が来たぞーぅ、」




と一声、ふざけた声をたてるなり、
ざらり、
銭金を一掴み、懐からとりだし、ぶん、と寝呆けている町中の辻より、空高くに放り投げた。

ざ、
ちゃり、ざざざりちゃりちゃらちゃらちゃらざらざらざざざ、

たわいもない金物の音が砂土に跳ねる。
軽々しい馬鹿げた音を立て、ぼとぼとと降る、雹か雨かのような銭金。

道辻に生首置いて、金撒き散らして。
何の戯事だ。

金音の尻尾が消えもしない内に、
黒い着流し姿はさっさと脇道、抜け道、街道へと消えていく。
それを追った。
街道を少しだけ歩んだ後は、また不意に脇街道、そして里道、山道と歩いて、
昼日中、夕刻、丸一日。
延々と歩ききった後に、ようやく、此処だ。
朽ちかけた寂れた忘れられた稲荷堂。

それこそ狐に化かされたような気がする。
狐に誑かされ、一晩かけて野原を巡らされた奴が居るというが、
俺も同様か。
ひょっとして、化かされた阿呆なのか。

否。

こんな腥い血臭のする狐など居るものか。
後を尾けられていることも知りつつ、生首を辻に置き、銭金を撒く狐など、要るものか。
どうでも、このふてぶてしい男はどうでも、人間だ。
あの兇暴さやこの珍しい金の髪はさておき化物めいてはいるが、
この人悪い笑いを浮かべるこいつは。
人以外であるものか。
何が、天孤、だ。
ゾロはあのふざけた文、生首に咥えさせられていた文の最後を思い出す。






  衆生貧苦すれど、弥勒来臨未だ遠し。
  天、天狐を下天に遣はす。
  其天狐金華也。是即ち敬すべし。尊ぶべし。
  天狐崇すれば、慰世撫民、養生安楽。

  弥栄、弥栄。               」

               






天孤、金華狐、
そんな噂は聞いたことがあった。

街道筋、道々を歩く中、宿で、女郎屋で、風呂屋で、茶店で、雨宿りの軒先で。
そういえば、と世間話に上せられる名前。
また天孤様が出たらしいよ、今度は品川宿だっていうじゃねえか、
御狐様はまた沢山の銭落として行かれたそうだ、羨ましいこった、
畜生、ここらの宿でも出ねえもんかなあ。

何だ其れは、と訊けば、えらく都合が良い話だった。

押し込み強盗、盗人、やくざ者、
市井の衆を殺して奪って恨みを買った賊をざっくり、始末してくれるらしい。
罪状を書いた書状を咥えさせた生首にして辻に晒しておくらしい。
天に代わりて誅す、天より給ふ、との文と共に、
そこいらに銭金を撒いておくらしい。
民草にとらせよ、治める者は取る勿れ、
そう文にも書かれた、有名な狐の撒き銭を奉行所連中も袖に隠す訳にいかず、
憮然としながら、銭を拾う奴らを横目に臍を噛み、晒し首だけを検分するとか。
天恵だ、天孤様だ、とえらくどこでも人気を得ているが、その正体を見た者は居ないらしい。
御狐様は民の味方、民草を苦しめる賊を懲らしめて下さる、
奉行所よりも天狐様に拝んで祈る方が良い。
金華狐様に晴らして欲しい遺恨を抱えた家は軒に藁狐を作って吊るしておけばいい、
そうすれば天孤様は家にお寄り下さる。
そんな噂を実しやかに囁く奴らを何度見たか。
天の御狐様だよ、有難いねえ、金色のお姿らしいよ、
勝手に決め付け、拝みたがる婆も何人見たか。


それが、この男か。
この化物めいた人斬りか。


呆れた思いでゾロは眼下の男を見遣る。
後を尾けられていると承知の上で、よくまあ、あんな戯けた真似ができる。
天の使いが聴いて呆れる。

要するに、人狩り、賞金稼ぎじゃねえか。

否、そこらの賞金稼ぎよりもずっと性質が悪い。
牛鬼の佐平次一味が二年前、薬種問屋の十七人殺しをしたのは本当だ、
だが、その佐平次一味を金を出しても殺してやりたいと恨んでいる弟が店を継いだのも事実。
そう、弟が佐平次を狩ってくれる奴を買いたがっている、金はどれだけでも積むそうだ、
そんな噂が裏稼業の世間に流れたのは久しい前の事では無い。
そう言えばその噂を、ふつり、聴かなくなったのは何時だ?
憶えてねえが。

手前、その殺しを請け負っちゃ居ねえか?
金で買われてねえかよ、その腕をよ?


「だから、どうだと?」


にたり、ふてぶてしく薄い唇が笑う。
薄い眼の色はいっそ怜悧だ、
それが言う、手前も同様じゃねえか、見たところ?


「同じ賞金稼ぎに言われる筋じゃァ、無ェんだよ、阿呆。
 手前の才覚次第じゃねえか、
 狐を名乗ろうが人を名乗ろうが何が悪ィ」


にやにやと悪びれずに言う辺りが、いっそこの悪人独特の艶になっちまっている。

つまりは、こうか。
天孤だ何だ、大仰な名乗りを上げて小金をばら撒いて悪人共の首を晒して天恵と見せて、
その実は首を売りつけてやがる訳か。
さぞや高ェ値で手前の腕を売ってやがることだろう、
ところがそれだけじゃ足らず、賭場荒しもついでにやらかしたりしてる訳か。
盗賊や人斬り、恨みを買う奴らがまとめて出入りする場なんざ限られてる、
そんな奴らが集まる隠れ賭場なら、荒そうがそこで首を狩ろうがお構い無しだ、
否、首の代金よりも、あの悪党共が抱えてきた金を根こそぎ攫う方がデケエ。
チンケな悪党だろうが何だろうが、手前の金を脅し獲られた恥を喋る訳は無ェ。
だが、テメエのような化物、とくに天孤の虚名を膨らませた化物を追おうとする阿呆も居ねえだろう。
下手に御孤様に手を出そうもんなら、そこらの阿呆共の恨みを余計に買うのが落ちだ。

天恵が聞いて呆れる。
コイツは並の悪人を喰らって生きるとんでもねえ悪人だ。

銭金をばら撒くと言ったところで、賭場荒しと首狩りでたんまり金を稼ぐこいつには、
痛くも痒くも無ェ。
薄っぺらい味の餌を撒くだけで、コイツの評判は天井知らずに上がる、
評判が上がればコイツへの殺しを頼む客も増える。
藁狐を吊るした家にそっと忍び寄り、
天孤だ、
そう囁くだけでコイツは一体どれだけの金と有難がる阿呆の謝意を得てる?
コイツは自分の虚言をそこらに撒き散らかして高く売ってやがる。
天孤だ? 
金華狐だ?
何が弥勒だ、慰世撫民だ。
騙りやがって。
とんでもねえ悪人め。


「で、そう言う手前は何を見物に来たンだよ、 
 妖虎?」


厭なふたつ名を呼ばれて、ゾロは顔を顰める。

糞、
最初っから俺の事を知ってやがったのか、この喰えねえ狐は。

その様子を眺め、面白そうに白い面が笑う、
テメエ、自分の通り名が嫌いかよ、
一番値が高ェ賞金稼ぎの名前の癖しやがって、贅沢だな。


好きな訳が無ェ。


眼を見れば腰が抜けて魂を抜かれちまう、化物虎のような眼の持ち主。
どんな強ェ奴でも斬ってくれる人斬り。
この風変わりな緑の眼はそんな風に有名になっていると聞くが、
コイツまでが知ってやがるとは。
悪名としか思えない自分の風評だが、
金にはなる。
ただ、金だけを求めての旅じゃねえんだが。


「テメエの技をな、見に来た」


あの斬り様をな、見せろや。
ゾロがそう言った途端、天孤は顔を顰めた。
手前、アレか、ヤットウの強ェ奴を捜し歩いてるとかいう噂があったが、本当だったかよ。


「俺ァ、闘らねえぞ」


ふん、と股ぐら広げて座りこんだまま、男は言う。
ゾロが胡乱気に眼を細め、その意を話せと無言で催促すれば、
俺ァ刀遣いじゃねえ、手前みてえな刀気違いとは訳が違う、
金も絡まねえのに斬り合いするなんざごめんだ、と抜けぬけと言い放つ。

その癖、
手前が俺より強ェって訳じゃねえからな、
この堂に入った時から手前は俺の間合いに入ってやがるんだ、
刀抜かねえからって嘗めんじゃねえぞ、とふてぶてしく睨め上げる。

確かに、刀は鞘に収めたまま、埃まみれの床に放り出したまま。

居合いの技を遣うようにも見えず、遣うなら鞘すら掴んでないこの状態では遅いにも程がある、
このまま抜刀すれば直ぐ様に長刀を揮えるゾロの方が有利なのは眼に見えている。
なのに、この黒ずくめの男は悠揚たる態度を崩さない。
この余裕は何だ。
糞、刀以外に何の武器を遣いやがる、
とっとと正体見せねえなら斬っちまうか、
そうゾロが物騒に眼を眇めた時、


「アァ、面倒くせえな手前は。
 其れ程知りてぇか、」


そう吐き捨てるなり、

ざんッ、

とゾロの胸倉を襲った蛇がある。

がッ、とゾロの抜いた刀がそれを防げば、
蛇は電光石火で退く。
否、
勿論それは蛇ではなく、かといって刃でもなく。
瞬時にまた退いたそれは、男の乱れた裾にささッと隠された。
にた、と男が嗤う。


「俺が本当に遣うのはコレさ」


足技か。

ゾロは唸る。

なるほど、あの乱れたやわらかい剣技はそれでこそ得心がいく。
目茶苦茶に乱れた間合い、力の籠め様がどうにも剣道を齧った奴とは違う、
しかも自己流で剣技を磨いた奴とも違う、
そう見ていたが。
剣は余技で、足技が主か。
その余技で、あれだけの悪人共を斬り伏せたか。
本当に強い相手だけにその足技は遣い、後は隠しておく、か?
流石は狐。
狡猾じゃねえか。
この俺はなまなかな剣技で誤魔化せる相手じゃねえと見抜いてか。
見抜いた上で、尾けさせ、なおかつ野外じゃ気づかねえ振りをして堂内へと入り、
自分の有利を誘うか。
たしかに、この狭い堂内、長い刀よりも、間合いを狭くとった方が有利な足技の方が効くだろう。


面白ェ。
こんな狡い、毛並みの変わった狐は見たことが無ェ。
面白ェ。


「で、俺を尾けて愉しかったかよ、人斬り?」


にやりと笑う狐。
狐、天の狐、野の狐もかくや、と思うような見事な金の髪が暗がりにも光る。

人斬りに人斬りと呼ばれる筋合いァ、無ェが。


「なに、手前の人斬りァ、業だろう。
 俺ァ喰うに困って斬ってるだけだ、
 手前みてえな修羅道堕ちてる奴と一緒にするなィ」


伝法な啖呵を切って、にたにたと狐は笑った。

で、
と続ける。

俺ァ、脚見せてやったんだ、手前の手の内見せろや、妖虎。
手前、どんな技遣って人を斬ってやがる?


煽る口調。
青い眼が唆してやがる。
言えよ、
俺が見せたのに手前ァ出し惜しみか、と嗤いやがる、眼で。


糞。


タダじゃ何も見せねェ、ってことか。
何でも餌にして喰らうかよ、この強欲な狡猾な狐は。

隙を見せればどこまでも喰らいついてきそうな牙を、ぎら、と覗かせやがる狐相手に、
人喰いの獰猛な虎も苦笑せざるを得ない。
手の内明かせば、きっとそれにも喰いつかれるだろう、
悪くすりゃ街道伝いに悪党達へ、あの妖虎の遣い手はな、と内情話を売り飛ばされかねえ。
まあ、それくらいで敗ける俺じゃあ、ねえが。

ふん、とゾロは豪儀に笑う。


面白ェじゃねえか。
この腐れかけた稲荷堂の中で、狐と虎の化かし合いだ。
まったく正気とも思えねえ、
いっそ笑えるほどに気違いめいた夜じゃねえか。

面白ェ。



「俺は、こう遣う、」


ぶん、と口に咥えた一本、手に構えた二本の刀で、
戯れに狐の金の髪をひとすじ、ふたすじ、
斬ってやる。
斬りはするが、そこは刀遣いの本領、
いっぽんの毛筋も乱さない。


斬るも斬らないも決めて、
切っ先、刃先の極みに賭けた、ぎりぎりの刀技。
研ぎ澄ました上での、刀戯。


ぱらり、黒い襟元に零れた金糸を見遣り、にた、と狐は唇の端を吊り上げた。
面白ェ、三刀流かよ。
しかも化物みてえな腕してやがる、ハ、まさに化物虎だな。


化物に化物扱いされたくねえな、
そう返してやれば、
ハッ、
低く嗤いやがる皮肉な顔。
その眼がぬめるような精気でもってこっちを舐めまわしてやがる、
まだ喰らえるところは無ェもんか、餌ァ、無ェか、と探りを入れてやがる。


強欲め。


だが、その強欲さと狡猾さと不埒、不遜さが面白ェ。


罠に嵌まる、
嵌められる、
嵌められる振りで喰らい返す、
そのぎりぎりのきわどい駆け引きが面白くて堪らねえ、
俺も大概、酔狂だ。


否、
この狐、化け狐に誑かされでもしたか。


この抜け目無ェ、油断ならねえ野郎の手の内をもっと探りだしてやりたくてならねえ、
にやにやとふざけた笑いをひん剥いて、肚の底に何を押し込めてやがるか、
暴いてやりたくてならねえ。
金髪碧眼のこの異形の男が、何をそのしろい皮ン中に潜めてやがるのか、
暴き出して舐めてやりてえ。
どういう味か。
甘いか。
苦いか。

喰いてえ。
抱きてえ。

白い膚と青い眼と金の髪。
艶麗なはずの見てくれの甘さを殺すほど、不遜で不埒な、憎々しいまでの野郎。
陰間みてえな媚など売りもしねえ癖に、
酷く、その炯々とした抜け目の無い眼の色は、何故だか、欲情を煽る。
ふん、と嗤ってこっちの隙を狙って喰らいついてきやがるその眼の端に、
婀娜めく何かが匂う、
ずくりと男根が天を向く。硬くそそり勃つ。
眼の前の身体、淫らな匂いのする躯と交わりてえ、と血が騒ぐ。

狐の妖術に化かし込まれたか。


「狐、」

抱かせろよ、

男が男を口説くのも莫迦らしい、と直裁に言を放り投げてやれば、
阿呆か、
と返された。呆れたらしい。


俺の尻ァ売りモンじゃねえよ、手前と寝て何の得がある、
そう呆れた口調で言う相手。


何言ってやがる。


マトモな誰が銭金払って化け狐の尻買うかよ、
化かし合いだ、
妖虎と天孤なんだろうが、俺らはよ?
どっちが妖力強ェか、力試しだ、化物同士のよ、

ふざけた戯言を、にやり嗤って返してやれば、
珍しく狐野郎が苦笑した。


図々しい事、云いやがる、
どっちが性質が悪ィって? 


この悪党、
と言ってくる唇を舐め、首筋を嘗め、また唇に戻って吸い、手は股を撫で回してやる。
硬く反り返ってくる男根は満更でもない様子だ、
人を斬って、火付けをして、生首晒して銭金撒いて、獣道を一昼夜歩き尽くして、
流石にこの男も昂ぶっているらしい。
血の赤を吸い、炎の紅を吸い、金の山吹色、獣道の樹々の緑を吸い、
その濃厚な色精に血を熱くしているらしい。

ぬるり、と舌で舌を嘗めてやれば、調子に乗るなと噛まれたが、
それでも絡め、吸ってやれば、貪るように吸い、絡め返してくる熱い舌。

男の裾を、つい、とゾロの掌が割る。
べらり、捲れた黒い着流しの下、現われたのは、艶やかな赤の腰巻。
女物のそれが、男の着る埃っぽい荒い黒無地の下から現われれば、
眼に毒なほどに婀娜めいて見えた。
しかも、その赤い滑らかな絹地は白い腿、脛を包む。
暴れる脚の間を更に割り、腿裏を掴み開かせ、そのまま男根を掴んでしまえば、
ぐい、と掌で撓り返る一物。
こうなれば止まるはずもねェ。
一遍勃っちまえば、もっとだ、もっと善くなりてえ、汁噴くまでなっちまいてえ、
そう腰を擦りつけて悦ぶのが男の性だ。
股の間に隠した柔らかな睾丸まで撫で回して可愛がってやれば、
天を睨んだ男根はだらだら濡れ始める。
その濡れた陰茎をぬるぬると掴んでしごき、溢れてくる汁を掌に受けて、
そのまま、ずい、と尻へ、奥の穴へと手を伸ばせば、
畜生が、離せ、と忌々しげに下から睨み上げられた。

離していいかよ、今、

猥らな息を耳許に吹き込んでやれば、糞、と狐の口が咬みに来る。

抱かせろ、
善くしてやるからよ、

手酷く噛みついてきそうな唇をからかいつつ、男根を擦り付ける。
勃起したゾロの男根が股座を行き来する度、
ぶるり、
擦りつけられる熱にあてられた男根が興奮していきり立つのが判る。

抱かせろよ、

甘えてじゃれかかるように耳朶を甘く咬んでやれば、ふ、と薄い狐の唇が喘ぎを洩らした。
股の前も後ろも、くまなく手指と男根で可愛がってやれば、体熱を上げた腿がしどけなく開き始める。
憎々しい眼や辛辣な言葉とは裏腹に、ひどく敏感な膚らしい。
ぬめりの助けを借りて、指を肉穴に含ませ始めれば、熱く蕩けそうな濡れた襞が指を咥え込む。
にちゅ、ちゅ、といやらしい音で泣き始める。
極上じゃねえか、糞。



腐れかけているとは言え、仮にも稲荷堂で。
化け狐と、妖し虎の、ふざけたじゃれあい。
騙し合い。
猥らな、睦みあい。



どうにも正気じゃねえ。



抱かせろよ、
ねだる、あるいは脅す、あまやかに恫喝する口調でゾロが唆す。

抱かれてしまえ、と煽り立てる。


糞、

罵る口調で狐が喘ぎ、
ゆるり、
ゾロの首に腕を廻してきた。

言ったからには極楽見せねえと、そのブツ、咬みちぎって喰ってやる、
ひくく凄んだ、しかし淫猥な嗤いを見せてきやがる男の股を、ゾロは抱え込む。


「コレ、」

「ァア?」

「この腰巻だ、何だこりゃ、何だって女の腰巻なんざ巻いてやがる手前」


女郎抱いてるみてえじゃねえか、取れよ、

そう言う男に、天孤はにたりと笑った。


「阿呆。
 コレぁな、後朝の別れを惜しんだ上臈が俺に下さった大事な肌守りだ、
 それだけじゃねえ、絹のコレ巻いてると裾捌きが楽なんだよ、」


テメエみてえな相手に蹴り技遣う時、絹のコレだと裾が邪魔にならねえ。
思い通りに自在に蹴れて、殺れるンだよ、
手前みてえな無骨な無粋な刀なんざ、俺ァ、遣わねえ、
羨ましいか、

武器の脚をゾロの腰に絡め、物騒な男はにたりと笑う。


抱いてる間も油断ができねえってことかよ。


上等、
にやりと笑い返して、ゾロは男根を突き入れる。
途端、あまりの太さ、硬さに呻いて仰け反る躯。
ゥぁ、と低く掠れた声を洩らすのを、男根を擦って宥めてやる。
腰をゆらゆらと緩く揺すり、含ませた陽物と肉穴とを馴染ませ、
腿や腹を甘噛みして待ってやれば、ゆっくりとひくつきながらも馴染み、
狎れ始めた肉がぬめぬめと動きだす。
恥知らずな自堕落な掌が伸び、自分で自分を扱き、濡れそぼる亀頭の穴を弄りだす。慰めだす。
は、
乱れた息を吐き出す唇が、
にィ、
と嘲笑った途端、きゅう、と穴がゾロの男根を咥えて締まった。
淫らな動きで腰をうねらせる、白い躯。


愉しめそうじゃねえか。


舌なめずりしながら小さな胸の尖りを咬み、
ついでにやはり気に入らない腰巻をずり上げ、毟り取ろうとしたら、
勝手な真似すんじゃねえ、と背中を蹴られた。

むっとして顔を上げれば、広げた白い太腿の間から、青い眼がぎろりと睨んでいる。

名も知らねえ相手の穴に突っ込んで、挙句に追い剥ぎたァ、やってくれるじゃねえか、
締め殺すぞ手前、

慳貪に言ってきやがる唇を塞ぐ代わり、
ぐ、
と一際深くを貫いてやれば、きつかったらしい、白い腿が攣れて上がる。


その腿、濡れた股座を包むのは、眼にも痛いような赤い腰巻。
血のような。
火のような。
椿の花のような。


その赤の中で、しろい肉が貫かれて淫らな熱を帯びる。紅潮する。
肉棒を咥えこんだ肉穴が、きゅうきゅうと赤く染まって搾ってくる。



本当に、とんでもねえ狐だ。



抱き終わるまでに、この勘に触る腰巻剥いで、手前の名ァ、聞き出してやるよ、

そう言えば、

ハ、上等だこの畜生虎、やってみな、

と返された。















椿のぽとり、堕ちる音。




花に囲まれた朽ち堂の中で、怪しい虎と狐の化かし合い。


夜陰に乗じて。















弥勒来臨未だ遠し。


下天の化生、淫楽、殷賑。


弥栄、弥栄。















(おわるとも)






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サイト閉鎖に伴い、お持ち帰り&転載許可を頂きましたので、烏賊海賊:kaminyoさまより頂いて参りました。
股の間から注意 第三弾です。


2005.07.10






                 

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