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「あたしを戦車にする気かよ、この野郎」







玄関を上がったら、入り口すぐの6畳へ、ゾロにひきずりこまれた。

ナミはゾロなんか怖くないので、ジロリと睨みつけてやって、
ちょっと、何よ、と威嚇してやったら、
し、
と指をたてられた。
節がごつりとしてる指なのに、意外とそれは長く、きもちがいいほどに伸びやかだ。きれいな、男らしい手だ。
それにムカついてると、その指が奥を指差した。
無言で。

サンジが電話している。

まくしたてている、
英語だ、ファッキン、だの、ダム、だの、シット!だの、悪口雑言をつきまくっている。
罵倒しているその語気が荒い、
いつものナミに見せる顔やゾロに悪態つく時の雰囲気とは全然違う、
荒々しい野郎の地金を覗かせる、ざらざらした、毒すら滲む、きつい語調。
英語のヒアリングはネイティブに較べて一秒遅れるナミだが、
その語調の荒さだけは吐き散らかす言葉の意味の理解よりも早く察する。
荒れ狂う怒気がサンジの言葉を歪めひずませ、罵詈雑言が呪詛や恫喝にまで近くなっている。
相手は震え上がっているだろう、サンジの吐く情け容赦ない毒針の嵐に。
鼓膜すら裂き破く勢いでサンジはまくしたて続ける、
よどみなく、叩きつけるマシンガンの勢いで口蓋の中で破裂する激しい音たち。
ガイジンそのものな激しい身振りでサンジはまくしたて続ける、
受話器を握りしめ、壁に向かって熊のようにうろうろして。
言葉の調子は洪水のようだ、奔流のように唇からは罵りが噴出し続ける。一向に衰える様子が無い。
この苛立ちようだと、存外相手も喰わせ者かもしれない、
のらりくらりと言を左右にしているのかもしれない。
姿の見えない相手に、サンジは激怒し続ける。
つらつらと滑る異国の響きで喚き続けるサンジは日頃と別人のようだ。
その語調を吐き出す肩に無理な力が入って、怒り肩になっている。
リラックスした時ほどだらしないくらいの猫背になる男が。怒り肩。

何アレ、と、思わずゾロに目線で問えば、知るか、と苦く返された。

1時間前からずっとああだ、俺が帰る前からああだったのかもしれねえ、と。


・・・何ソレ。


冗談じゃないわ、とナミは肩を怒らせる。
サンジ以上に肩をもりもりと怒らせる、何それ、何ソレ、どういうことよ。

ゾロ、あんた、何してんのよ、とナミはきつくゾロを睨む。

サンジの激怒は相変わらず続いている、荷がどうこう、と言っているから、
たぶん輸入業者かなにかとのやりとりだ。
しかしどうも失敗した取引らしい、
なのにサンジがここまで拘って文句を言うとは、余程の取引だったか。
食材に並々ならぬ情熱を傾けるオーナーシェフの熱意を知っているナミは嘆息をつく。
判るわ、
自分も交渉仕事が多いナミは察する、
でも、だけどね?
続けてそう思う、
何時だと思ってるの、サンジ君?

深夜も1時を過ぎて、男ふたりの部屋を訪れる自分の非常識、
情人たちの住まいを、桜が咲いたから、という理由だけで急襲する自分の我儘は充分に自覚しているが、
それでも言う、
何時だと思ってるの、サンジ君?

寝ぼけたツラを覗かせるか、もしくはセックスの熱で火照ったツラを見せるか、と、
ニヤニヤ悪趣味に笑いながら、無理に取り上げた合鍵を回せば、こうだ。

ホモ二匹の春の宵は、どうにも無惨な有様。

しかもサンジの疲労は並大抵ではないと見た。
あのシャツの皺の具合。
普段のサンジなら眉をしかめそうなシロモノがサンジの身体にまといついている――崩れた印象は嫌いではないが、人による。
サンジに、不似合いなほどの崩れなど、認めてやらない。
冗談じゃない。
あたしが眼をかけてる男に、そんなことは赦さない。

笑わないサンジ君なんかイヤ、とムカつきながらナミはゾロを尋問する、
ねえ、いつからああなのよ?

これでいて結構聡明なゾロは、ナミの半端な言葉でも拾い上げる。

知るか、と吐き棄てる。

俺が教えて欲しいくらいのもんだ、
クソ、ずっとレストランの事務所に泊まりこみやがってたよ、アイツはよ、
帰ってきやがったと思ったら、コレだ。
俺も会社に泊まりこんでた時があったから、ヒトのこた言えねえが、
だけどよ、
 
     、

・・・・・・・・・・。





喋りすぎた、と言う顔で、ぶつり、言葉を切ってゾロは黙り込んでしまう。







何ソレ。



何それ。










・・・・・・・・あたしを戦車にする気かよ、この野郎。










ナミはぎゅんぎゅんと沸点を迎えやがっている自分を自覚する。
何ソレ、何それ、とグルグルと脳内に怒りがこみあげる、
何それ、冗談じゃないわ、何日寝てない、ってツラしてんのよ、あたしのオモチャは。
あたしの可愛いペットは。サンジ君は。
あんな疲れた顔してる野郎なんざ、サンジ君じゃぁ、ない。

ナミさんナミさん、と尻尾を振ってくるアホなサンジが、ナミは好きだ。
ちやほやしてくれて、そのくせ紳士で、真摯で、やさしくて、
エロい野郎のくせに、肝心な時には劣情のカケラも無い。
本当に、兄のように安心できる相手。
兄なんか居ないけど、このひとの妹はさぞかし幸せだろう、と思ってしまうような男。
異性との付き合い=恋愛、なんて単純思考なんざ、ちゃんちゃらおかしい、と思えるほどに、大事なひと。
大事な男。
ナミさん、大好き、と言うくせに、熱烈に愛してる男のコイビトが居る男。
しかもそれを認めたがらない阿呆なホモ。
そして、忌々しいそのホモラブ相手も、認めたくはないが、見事な男、そんな奴だ、サンジは。

あんな声を出していていい男じゃない。
あんな皺だらけのシャツを着ていい男じゃない。
何日間も寝ないで働きづめ、女が部屋を訪れても気づきもできないような無粋な男で居るなんて、赦さない。

あんな、眠りが足りない、隈の濃い顔で疲れてていい男じゃ、ない。






怒った、とナミは思う、
怒った、怒った、あたしは怒った、
ガマンできない、クソ、あたしを戦車にする気かよ、この野郎ッ!



ゾロ!

戦車隊指揮官のナミは叫ぶ、
右よ、やっちゃって! 
速攻で脚、それから右35度のベッドに向かってゴー!

的確に指示を出しながら、廊下の幹道直線、それからリビングの平野を戦車なナミは豪速で邁進する、
エ、とか驚愕して慌てふためくサンジを攫う、
え、な、ナミさん、いつ来てたの、とか間抜けた声でビックリしてるアホの脚を掬う、
すかさず仰角からその倒れかかるカラダを支えたゾロがそのまま抱き攫ってベッドルームへとサンジを担ぎこむ、
そうそうそう、いっちゃえゾロ!と野蛮にけしかけながらサンジの手から受話器をもぎとり、ナミは通話を叩き切る、
シット、ファック、アスホール!とか汚ない言葉を吐き散らかして電話の相手を呪詛しながら叩き斬る、
そしてベッドに放り込まれてじたばたしてるサンジの上に、どっかりと馬乗りになる、
動くな!と恫喝する。

ナミの太腿の下で、サンジが鳩に豆鉄砲くらいまくりな感じのデケエ眼をみひらいて硬直する。
うむ、全面降伏だな、とナミ将軍は重々しく頷く。
ナミ将軍を忌々しそうに睨みつけてるゾロを、ふん、と鼻先でせせら笑っておいて、ナミは更なる攻撃を開始する。

寝なさい、サンジ君、と命令する。

寝なさい、何時だと思ってるの、そんなカオしてあたしの前に居ないで。
勝手に踏み込んできた闖入者の分際もどっかに放り捨ててナミは重々しく宣言する。

サンジ君はアタシをちやほやしてヘラヘラしててなさい、
このあたしがわざわざ夜桜見物に誘いに来てやったのに、気づかないで電話で怒鳴ってるなんて百年早いわ、
そんな生意気なドレイには夜桜見物させてあげない、だから寝なさい、
レストランは何時に始まるの? 
もう寝ないとダメな時間って知ってるわね? 
悪いコ。
悪いサンジ君なんかオシオキなんだから。

おしおき、と言いながら、ナミはサンジに毛布をひっかぶせる。

ひっかぶせた毛布の上から、母親があかんぼに添い寝するように、絶妙の距離とポイントで、
ぽん、とサンジの肩を叩いてやれる位置に陣取る。
長々と伸びたベッドの上のサンジの体。
それにゆるく沿うかたちのナミ。

ゾロ!とナミは呼ぶ、
ほら何してんの、あんたは右方向部隊なんだからちゃんと援護しなさい、ボケっとすんじゃないの!

ベッドの片脇で憮然と見下ろしていた長身も、ナミはベッドにひきずりこむ。

サンジの横に、ゾロを添わせる。

ぽん、ぽん、とふたりの肩を交互に叩いてやる。
おやすみ、おやすみ、いいこでね、とゆるやかにうたってやる、
ねんねよ、おやすみ、またあした、と囁いてやる。


くすくす、とナミは笑う。

くすくす、とサンジも笑う。

ゾロも低く笑っている。



ねんねよ、と囁くナミの戦車な特攻は、
クソむさくるしい野郎ども二匹の、長々と横たわった寝姿によって完全勝利を迎える。



ゾロ、あんたもサンジ君同様、何日マトモに寝ないでいたの、
そうナミは口にださないでぶつぶつと文句を言う。

情人が眠れない夜を過ごしている間、不器用に自分も眠ることもできないでいた阿呆を、
ナミは憐れむくらいに、いとおしむ。
しかも、それをサンジにもナミにも気どらせまいとしてた、頑なな阿呆を。

どうにも不器用で依怙地な、この阿呆なコイビトどもを、
どうにもこうにもいとしくて、戦車なナミは獰猛なまでに、きつくきつくいとおしむ。



なんて馬鹿なの、このおとこたち。
見てられなんないほどに、阿呆だわ。
完全無欠なまでだわ。
いったいどこまで意地はりあえば気が済むってのかしら。


馬鹿。













この阿呆どものためなら、あたしは本当に戦車になる。
そうナミは思う。

この阿呆どもを眠らせない街なんざ要らない、
そんな厄介ごとなんか戦車なあたしのキャタピラで踏み潰してやる、
がんがんざりざりばりばりと踏み潰した挙句、
この阿呆な男たちが眠れるのなら、いくらでもそうする。


ナミを不器用に、ぶきっちょに、山盛りに、愛することはできても、
自分に関しては、そして互いに関しては、どうにも、歯痒いくらいに可愛がってやれてない阿呆ども。


眼を離したら、どんな災厄を引き受けてるかもしれない阿呆ども、
その災厄をがんがん乗り切ってくだけの度量も根性も力もあるが、
時折、その柔らかいやさしい部分を知らず、露出しては傷つく阿呆ども。




あんたたちを守るためだったら、こんな街なんか惜しくないわ。








戦車なナミは獰猛に想う。

もう寝なさい、このやんちゃな阿呆ども。

ぎゅうぎゅうとその細い腕で、優しい乳房で、ふたりの男を押し潰す。
いやらしいセックスに耽っているはずの男ども、
だが、今夜ばかりはどうにもかわいらしく見える阿呆どもを、
ぎゅうぎゅうと抱きしめて、ねむらせて、安らがせる。

あたしが守ってあげる、
あんたたちが守ってくれるように、あたしが。
あんたたちの痛みなんか踏み潰してあげる。














戦車な、無敵なナミが制圧する、この夜の街は、戒厳令。


ふわり、ふさり、濃厚に、でも、あわあわと咲いていく桜の花の花弁の色、
そのやさしい色に撫でられた夜闇に満ちた、春の宵。
花の咲く音、そして、戦車なナミのキャタピラの進軍、
そのやさしい轟音に街は制圧されて、ひとっこひとり、猫のこいっぴき、居ない。

皆、春眠を、だらしなく、やさしく、貪る。


戦車なナミすらも、男ふたりにやさしくだきとめられて、ねむる。




花、戦車、そんなものにゆるりと春の夜はやさしく制圧されていく。



ふわぁ、と吐き出した寝息がひとつ、やさしくやさしくたわいなく、戒厳令をしきこめていく。














(おわるのんのん)





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サイト閉鎖に伴い、お持ち帰り&転載許可を頂きましたので、烏賊海賊:kaminyoさまより頂いて参りました。
「天から不意に。」の続きです。


2005.07.10






                 

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