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えーっとッッ。


こういう場合はどうすんだ。
うーん、こりゃマジで参ったぜ、うううううう、どうすりゃいいんだ、
とサンジは唸る。

やっぱアレか、110番か、うんやっぱりパトカーの出番か、
ピーポ君を呼んじゃうしかねえか。
そうかそうかうんうんうん、いやだってやっぱ何ってたって盗難だしな、
って、

と、盗難・・・ッ!

ととととととっとととう、とうなん、盗難、
う、うあ、東南じゃねえんだよな、盗難なんだよな、答案でも糖軟でも塔男でも無ェ盗難なんだよな、
つうかオイなんだ、糖軟って。コラ。
糖分が柔らけぇのか、そうか、そりゃアレか、
血糖値高すぎてぐにゃんぐにゃんになっちまったのか、
って、うわ怖ッ!
じゃねえよオイコラ、盗難だ盗難だ盗難ッ! 
盗まれる災難ッ!
あああああ災難が盗まれちまえばいいのにようッ、盗まれたのはなんとマイ金とかっては何だ、何なんだコラ、
わ、笑えねえ、
いやもう皆目笑えねえ、
大体発音が悪ィぜ盗難、
なんかアレだな、 とーなん 、なんて発音しちまうとビックラしちまうな、
タダゴトじゃねえ、って身構えちまうじゃねえかよ。う、うわ。ヤダな、うわ。
う、ううううう、で、でもよ、でも、ぬ、盗まれちまったんだ、そりゃ本当なんだ、
こりゃ警察の、ポリの、ポリ公のお世話になるしか無ェだろう、クソ、
気は進まねえがよ、ポリ嫌いだからよ、でもオトナになるぜ俺ァ、うんうんうんうん。
うん。

つうか、オイコラ、ポリ。ポリ公。
ポリ公よォ。

もういっそ呼ぶ前に来いや、来やがれ、
そうだ来やがれ、おおそうだ、たまにゃ気をきかせて呼ぶ前から来てみやがれってんだ畜生ッ、
え〜、ポリですがー、なにか御用ございませんかー、
ハイそこのアナタ捕まえてほしくありませんか、
自白の御用はございませんかー、減刑しちゃったりしますよー、
今ならもれなく実刑5年引きッ! いやんもうお買い得ッ!!   
・・・って、いやいやいやいや、そりゃ流石に無ェだろう、
つうか刑酌量すんのは警察じゃねえし。
あり得ねえあり得ねえ。うんうんうん。
いやもうあぶねえ、うっかり騙されるトコだったぜ、
いやだから油断ならねえんだよなポリ。ポリ公。
ポリ公言っても、ポリープ野郎じゃねえぜ、ポリエチレン野郎じゃねえぜ、ポリス野郎だぜ。
そのポリ公に騙される前に気づくたぁ、流石俺。 ナイスだ俺。
本当に俺ってばナイスでクレバーでクール。うん。もう必殺クール。うおあ、惚れる。うおあ。
で、ポリは気が利かなくてトロくて騙しんぼだがよ、
いやまあそんなこたどうでもいいからアレだ、問題はだな、とにかく、




寒ッ!!



ってことだ、
さ、さむ、い、ってことだ、
だああああああ畜生! 寒い! 寒ィッ!
寒いってんだよこん畜生ッ!

ああああもう腹がたつなああああああ責任者出てこいッ、出て来やがれッ、マジでオロすッ!!
つうかオロす前に、その前に暖房と服と喰いモンと車持ってきやがれ、
アア? クルマは持てないだあ? 
るせえッ、ともかくも持って来い、速攻で持ち運びやがってココに来い、
ひょいっと小指と人さし指でつまんで来いクルマ!


つうかスミマセン、俺が死ぬ前に来てください。


いや、つうか来い。
来やがれ。

来い、来やがれってんだこん畜生ッ、
このナイスな俺様をこーんな北海道、
でっかいどうほっかいどうの大自然の中で、
凍死&飢死&迷子死させるなってんだ、コラアアアアアアアアアアアアアア!


ガクガクブルブルと震えながら、サンジは苛立っていた。
苛立ってたが、脚はカッキンカッチンと硬張ってた。硬張って震えてた。




そう、ここは北海道。




ひろびろとした、壮大な土地にサンジは立っている。

いやもう、マジって広大。宏大。壮大な大地。
周囲を見ても、途方もない広いひろい眺め。
そのひろいひろい果ても無い眺めの中に、ざざざざざと風に木々が草がなびくばかり。
ひっろい、ひろいひろい原野が、のびのびと眼前には広がるばかりだ。

丈の高い草、その向こうには林、林の向こうにはゆったりとした、山々々。
ゆるやかな山脈がシルエットになって夕陽に霞んでいく。
その夕焼け空、黄昏時の空を、トンビが、ぴろりろー、とくるり廻ってどっかへ帰って行く。
そういや、カラスだろうか雁だろうか、
鳥の群れがばさばさりとどっかの方角へ向かってくのもちょい前に見た。

テレビで見てりゃ、感動モン間違いナシ、な、大自然。

そう、大自然。
遮るものもない、木々や山くらいしか空の輪郭となるものが無い、そんな雄大な景色。
でっかいでかい、おおらかな、どーん! とでっかい黄昏。
夜になりかけた晩秋の風景。
暮れてゆく、大自然。 
原野、山々を呑みこむように、暮れなずんでいくひろい空。
穏やかな紅に赤にマゼンタ、ピンクに橙の輝き、
そしてやわらかくその上に降ってくる夕闇の紫に群青、濃紺、黒。
その中できらめく、今日最後の日没の光の黄金色。

いやもう。
いやもう、なかなか、イイ景色なのだ。

うん、本当に、この空一面に広がる夕焼けってのは、めったに都会じゃ見られない、
ほーんっと、ココロが洗われるようですね、ってな感じの、まさに雄大な荘厳な夕焼けなのだ。
そう。


まあ、自分が凍死しかけてなきゃ、のハナシだが。



寒いのだ。

マジって寒いのだ。


山の中の11月の夜になりかけの頃なんて、
本当に本当に本当に寒いのだ。



だって北海道。
だって山の中。原野。人里離れたとおい土地。
だって、徒歩。
だって、迷子。
だって、文無し。
だって、着たきり雀。上着ナシ。
だって、だって、だって、
と、ともかく、
す、
スゲエ悪条件。


マズイのだ。

マジでマズイ、と本能的に脳内危険信号がピコーンピコーン!と点滅しちゃうくらいなのだ、赤く。

でもだけどそれも当然。


昼からずっと歩き続け。
メシも喰わないで、何も飲まないで、
つうか喰えねえで、飲めねえで。
そんな状態の中で、ペタンコでキュウキュウ言う腹と干乾びてく咽喉を抱え、なだめ、
吹きっさらしの寒風の中を上着も無しで、シャツ一枚で、ずっとずっとずっと、てくてくてく。
だんだんと体温は奪われてく。
だんだんと疲労が溜まったカラダは餓えて渇いてヘタっていく。
しかも、陽が暮れるにつれて風は冷たくつめたく重たく湿り気を増し、
底冷えのする夜風になって吹き付けてきやがる。
寒いし、疲れてるし、腹も減ってるし、
マジで気分は体調は、自分史上最低最悪最バッド。バッドバッダーバッデスト。

ポリでもポロでもポルノでもロマンポルシェでも、ああ何でも、
もうとにかく何でもいいから、
と、とにかくだなッ、とにかくどうにかしろやこの事態をッ!
あーもう何でもいい! いいです! いいですから!結構ですから!
結構毛だらけ猫灰だらけ、体育会系新入生に話しかけても返事はハイだらけッ!って感じだこん畜生ッ!

つ、つうか本当に何でも誰でもいいから、ぷ、プ、プリーズ・・・ッ!
ぷりーずへるぷみー! みー! みいいいいいいいいいいいいいッッ!
そう吠えたいくらいに、マジで参っていた。
困っていた。

だって、本当に、もう途方にくれちまうくらいの、極限バリバリ最悪条件なツクダニ状態。

だって、携帯も通じない、バリバリ無人なバリバリ原野なバリバリ僻地。
人っ子ひとり居ない、っていうのは、コレだなあ、と呆然とするくらいの広い土地。
そんなトコで、バリバリバリバリ、バリッバリの、迷子。

おうああああああ。
自分はいったいどの方向に向かえば、人里に辿り着けるのでしょうか、
サンジはマジで自問自答する。

つうか生きてる間に辿り着ける距離ですか、
なんだか周りを見ても見ても見ても、街灯ひとつ無ェんですけどよ、
道路標識すらも無ェんだけどよ、ねえ。

こ、こんな状態でどんどん暮れていくんじゃ、本当に、どうなるんだろう。
ちょ、ちょっと待ってくれ、オイ、本当にこりゃ野生の王国じゃねえか、
お、俺は認めねえぜこんなん、
このシティ派洗練ボーイのサンジ様がこんなトコでこんな迷子なんて冗談じゃねえ、
あああああでもいくら認めなくても、マジで自分の居場所が判らねえ、
つうかマジでココはドコ、
ドコなの、ねえ、
つうか俺はドコに向かって歩いてんの、
ねえ教えて、本当にコッチでいいの、
歩いてっていいの、つか俺ァどっちに向かって歩いてるの、立ち止まった方がいいの、
でも立ち止まったら凍死が見えてる、
でも進んでってもさっぱりどっかに行ける気がしねえッ! って状態。

いやホント、マジで、遭難状態。


そう、遭難。


その言葉を思いついちまい、ゾクリと肩を震わせるサンジだった。
そんな、テレビかラジオか新聞でしか見聞きしねえ、
まさか自分がそんなハメに陥ることになることなんか無ェ、って思ってた、そんな単語。

遠いとおい、縁の無ェ単語だったはずなのに。 遭難。

いやしかし、でも。
マジで遭難だ、こりゃ。
自分がどこに居るか判らねえ、しかも喰いモンも着るモンも連絡方法も無ェ、ってのは。うわ。

しまった、マジだ。
もうマジって遭難だ。
うわ。
うわ。

ま、参ったな、いや本当に参っちゃったな、とサンジはフラつきながら青褪める。

星が見えればまだしも、見えない。
曇ってやがる。
つうかアレだ、東京の濁った夜空に慣れたこの眼で、星座なんかどれだけ見てとれるんだろう。
もう500円賭けてもいいけど判んねえ方に俺ァ賭けるッ!って感じだ。
いやあそりゃあ賭けになりゃしねえぜハハハ!って感じだ。
もう思いックソ、ムナシイ感じだ。
星座かあ。
見てねえなあ。
もう判らねえだろうなあ。
昔は星座大好き少年だったんだけどなあ、
船乗りになるにはやっぱ星座を読めなくちゃだぜ、って一生懸命に夜空を見上げてたなあ、
あーあーあー、あの頃はよーく憶えてたんだけどなあ。
小さい頃に読んだ、読み込んでた『船乗りのための本・チビッコ版』なんざ、
やっぱこんな時に役に立つ訳無ェのか、と泣きたくなる。

役に立たない大人なサンジは、迷子。

もう本当に本当に、マジって迷子状態。
スペシャル迷子。アンビリバボー迷子。
つうか、生命まるごとオールでマジって危機状態。
存在そのものがこの世からフラリと居なくなりそうな壮絶迷子状態。
一言で言うなら、ヤベエ。
マジヤベエ。
マジクソ、ヤベエ、のだ。ウワア。うおあ。

あーあーあー。

いやー、参った。
ホント、参った。




俺、ココで死ぬのかな。




エ。
死ぬの俺。
死んじゃうの俺?

エエエ?

うわ。
う、うわ。うわわうわわわわ、エエエエエッ、うわ・・・・ッ!!!

い、いやでも、マジで本当に死にかねねえぞ、こりゃ。この状況じゃ。うわ。うわうわ。

な、なんかせめて、辞世の句でも詠んでおこうかしらん。 詠めないけど。
つうか詠んでも紙無いけど。 
つうか詠んで紙に書いて、誰がそれを発見してくれんのかな、クマに発見されたらどうしよ、
歌心を解するクマであることを望みますって言ってみたところで、
クマが俺の歌のヘタクソさに怒って、死体か半死体か3/4死体をバクリと喰っちまったらどうしよ。
うわ、1/4死体なんて残されてもどうしろってんだコラ、
オイもれなく残さず喰わねえか、この阿呆んだらって、あああああ違う! ちゃう! そやないッ!!


ああもうイヤ。
イヤったらイヤったら死ぬのはイヤだし食い残しもイヤ、クマはイヤ。あ、歌もイヤ。



あー。

あーあーあーあーあー、いやもう、勘弁して、ホント。ほんと。本当に。



シュボッ!とラストな煙草に火を点けながら、サンジはふかくふかくふかあああく溜息をつく。




絵美ちゃあああああああああんんんんん。



ねえ、どうして俺を棄てたのー。



つうかえとえと、どうして俺を残して、ぶろおおおおおんッってクルマで走り去っちゃったの。
つうかソレ、俺が借りたレンタカーだったよね、
えとえと、俺、それを2日後に返す約束でレンタルしたんだよね、
うーん、たしかにカーナビがうまいこと言うこと聞かねえし、ちと色があんまり好みじゃなかったけど、
で、でも、それをぶろおおおおんっと軽やかに乗って行かれちゃうと、
お、俺、マジで困るんだよね、
だって俺、徒歩じゃ北海道な原野な山からどっかに辿り着くってできなさそうな気がするし、
つうか絶対ムリだから絵美ちゃん。いやもう本当に冗談キツイなあ絵美ちゃん。
いやもう、もう、本当に堪忍して。いやん。

つうか寒いよ絵美ちゃん。

せめて上着だけでも渡してくれればよかったなあ、
つうかえと、そのあのその、トランクに入れた俺の荷物、
あの160万入ったバッグ、アレ持ってちゃったのかな絵美ちゃん、
俺もあの金はあのそのあの、ていうか、
てててていうか、あのそのあの、
まさか、そのあの、あのさ、
ね、
ね、エ、えっと、
え、絵美ちゃんてば、ひょっとしてあの金が欲しくて俺にこんな、

って、

エ、

え、

え。
・・・・え。

えええええええええええええええ!?


・・・・・・・・・・・・えー・・・・・・・・・・・。


や、やっぱそうかな、う、うん、そうなんだろうけど、うん、悟っちゃいるんだけど、
うん、やっぱりショックだなあ、ねえひょっとして絵美ちゃんてば、
俺のこと、遭難った挙句の果てに死んじゃえーって思ってるの、
俺ァこんな死に方するほど悪ィことしてきたかなあ、
ほ、ホストだからって、いっくらなんでもホストだからって、
な、なにも死ねとか思われなくても、
こ、こんな扱いされなくても良さそうなモンなのにな。あーあ。
あー、あーあーあーあー。

な、なんだか本当にカナシクなってきちまった、
つうかマジで寒ィ、
絵美ちゃん、オネガイ、
ジャケットだけでも今からくんないかな、
つうかもうお金なんかあげるから戻ってきてくれないかな、
オネガイだから、いやもうマジで頼むから、いやちょっとホントに俺死にそうな気がするし。
いやもうホント。マジで。マジで。

つうか何時間歩いてんのかな。
腹減ったな。
ていうか咽喉が痛ェな。
口の中がカラカラカラカラ干乾びてやがる、マズィ、マジでこりゃいけねえ、
つうか、さっきからぽやーんとしやがってるぜ脳味噌がよ、
ああもう朦朧状態に近ェ、
あーあー、こりゃ、アレだ。
脱水症状起こしてやがる。

あー、クソ。
マジでこりゃあ、極限サバイバルー、な状態だ。


マズイなあ。


マジで死んじゃうのかなあ。


あーヤだなああ、こんなカッチョワルイ死に方。


もうちっとキレイにマボロシみてえな感覚の中で死んだりとか無ェのかいオイ、
よくあるじゃんよぉ、お花畑が見えるとかさ、
ありゃやっぱ園芸マニアじゃなきゃできねえ死に方なのかクソ、
今から俺もパンジー植えたりしようかな、い、生き延びられたらそうするからドウかな、
って、
うおあ、
ていうか幻覚が見えてきてる気がするぜ、

ホラ、なんか来る、
来る、
来てる気がする、







トラックだ



へー、トラックだ、
トラックかああああ、そうかああ、
わーいトラックのマボロシなんか俺見ちゃってるよ、ワーイ!

そっかあ、俺ってばトラックマニアだったんだああ、そうだったんだああああ。
ほおおおおお。
いやー知らなかったぜ、俺ァトラックラブな野郎だったんだ、
いまわの際にトラックの夢を見て死にてえとか思ってたりしたんだ、
ほおおおおおお、いやいやいや自分ソウルのこととは言え知りませんでした、
いやもう真の自分を知ることができました、、
ふうううん、意識下に押し込められてたトラックラブソウルがこんな時にぺろりんと出現って、
・・・・て?

て!?




オイ!



おい!


おいおいおいおいおいおいおいッ、
違う!




うわうわうわ、マジでトラックじゃねえかオイ!
モノホンだ!


マヤカシじゃねえぞありゃ、マボロシじゃねえ、マジってトラックだ、
クルマだ、
ヒトだ!

ほら見ろ、マジでライトじゃねえか!

ありゃライトだ、おおお間違いねえぜ、狸や狐に化かされてんでもねえし、UFOでもねえッ!
ぶろろろろっろおおんッってエンジン音もしやがるじゃねえか、
や、やった、うおあ、マジでトラックだ! クルマだ! ニンゲンが乗ったクルマだ!
うおおおおおおおッ、地獄で仏じゃなくて、それどころじゃなくて、北海道な迷子な原野でトラックだ!
瀕死にトラック! 九死一生にトラック! 
九死に一生、それがトラックってこたあ、九死 + 一生 = トラック かッ!
そうかそうかそうだったのか、いやもう勉強になりましたセンセイッ、ありがとうございますッ!
 
と、ともかくッ、あああああああ畜生めッ、ビバだぜ俺! 助かった!!!!

や、や、ヤターッ!!!
助かったーッ!!!!!!


ヘイッ!
トラック!
とらっくううううううううう!!!!
乗せてくれッ! へいッ!!!! ヘイッ!!!!!!
HEYッ!!!!!!!!!!!!!!!!!

ぶろろろろろーん、とトラックが轟音を立てながらやって来るのを、
サンジはもう泣きそうにジタバタヨロコビながら、道脇で見ていた。
もうギャアッ!と喚きたいくらいに嬉しく、待ってた。
ビシイ!と親指を突きたて、
ヘイ!と生まれながらのヒッチハイカーのように、雄々しく凛々しく立っていた。
つうか正直言うと、道路にそのまま、
安堵のあまりにへにょへにょ〜と倒れこみそうなくらいだったが、
それを気概でもって、必死に不逞不敵スマイルで支えて気張っていた。



来る。

来る。


マジで来る。




ぶろろろろろおおおお〜っと、低いひっくい地鳴りのような重低音の音を響かせながら、
デケエ、ごっついシルエットでトラックが走ってくる。

真っ黒なボディ。

夕暮れの斜光の逆光で、影になって黒く浮かび上がってんじゃねえ。
元々が黒いんだ、真っ黒なんだ、
死神トラックかい、アア? と訝しむくらいに不吉ちっくにブラックな車体、
それが重低音で唸り、アスファルトの路面を舐めるように滑らかな走行で疾走してくる。

疾走、ブラックトラック。

何だか得体の知れない黒い黒い漆黒の車体が、
どっしりと重たい車体のくせに、恐ッろしいくらいの滑らかなハイスピードで風のように走って来やがる。
ピカリ光る、眩しいライト。
黄昏てく、がんがん暗くなりかかる夕闇を切り裂く、閃光なライト。
ライトがまるで鮮烈な眼のようだ、そんな錯覚すらするキカイなケモノ、
疾風、ちゅう言葉が無闇やたらと似合う、そんなデケエ鋼鉄のケモノ。
うあ、なんだかマジで不吉ちっくだが、いやもうそんなこた言ってる場合じゃ無ェ。

やった、救いの神だ、奇跡だ、天の使いだ、
やったあああああ助かった、マジで助かったぜ、
おうあああああカミサマありがとうッ、
マジって俺ァこれから仏様も神様もキリスト様もムンゲラギャンゴラ様(仮名)も信じますしんじます、
ああもうラブを捧げちゃうぜッ!
おっとォ、でもお布施は勘弁でプリーズ!


早速に阿呆なことを脳内咆哮で喚き散らしてるサンジの元へ、
ぶろおおおおおおおおおおおおおおお、と低い、
地を這うような極低音で漆黒トラックが猛烈スピードでやって来て、
そして、
そのまま、



キレイにスルーしていった。





そりゃもう鮮やかなスルーっぷり。







キレーイにサンジの突き出した親指なんざシカト。無視。アウトオブ眼中。
眼に入りゃしません、て感じでスルー。

しゅごおおおッ、と、猛スピードで通り過ぎられたサンジの髪がばささささと乱れ、
しゅぱあああッ、と猛進巨車体に煽られた風がひときわキビシくサンジの体温を奪い、
そして、しゅざざざざあ、と路面の枯れ葉を巻き上げ、撒き散らしながら、走り去って行った。





ア。





思わず、サンジが一瞬キレイにボケた。


そらもう当然、ヒトとして、マジでこりゃあ停まるしかねえだろう、
だってこんなトコでヒッチハイクしてる奴、
しかもこんなシャツ一枚で寒風の黄昏時の原野をウロウロってる奴、
しかも明らかに助けを求めてるぜ!ちっくに親指を突き出し、ヘイ乗せてくれ!って全身で言ってる奴、
そりゃあもう乗っけるしかねえだろう、そうだろう?

それを、爽快なまでにサックリとスルーられて、
ハイ?
と一瞬眼が点になった。


い、いやもう、そのあのその、えーっと。


あの、俺、死にそうなんですけど。

あの、俺、遭難しちゃってんですけど。


あの、あのそのあの、もうその、あの、俺、マジってヤベエんですけどね、
もう本当に本当に本ッッッ当に、もんのすげえレベルでマズイんですけど、
どうしたらこんなに困ってます状態な俺をほっったらかしにしたまんまでスルーできんのか200字以内で述べなさい、
って感じなんですけど、
ちゅうか、オイ、
ぅおいッ、待てイッ、待ちやがれ、
待たねえかッ、コラアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!


お、おんどれあああああああああッ、ヒトの道ってモンを知らねえのかあああッ、
このクソッタレ野郎、クソ外道野郎があああッ、
俺様の窮状を見過ごしにして走り去るとは何事だキサマ、
いっくら車輪が付いてるからって、世の中にゃやっていいことと悪いコトがあるんだ憶えとけッ、
ちなみにワルいコトほど愉しかったりすんだが、って、
ああもうそんなコト言ってる場合じゃねえんだコラアアッ、
ともかくもソコに直れッ! 座れッ! 
説教しちゃる、つうかマジで殺す、オロす、惨殺るぜオラアアアッ、
この俺様を棄て置いて走り去るのは絵美ちゃんだけで十分だってんだッ・・・!!!!




ちゃッッ、と、素早く眼を走らせると、あった。




石。





見事に尖った、武器モードな、当たると痛いですけんッ!ってな感じの、石。



フ、とサンジはブラックに笑った。ブラックサンジとなって笑った。


フ。
フフ、フフフフフフフフフ。
フ、フハハ、思い知るがいい、この外道トラック野郎。

この俺様を乗せずにシカトスルーしたことを死ぬほど後悔させてやんぜ、
ふ、フ、フハハハハハハハハハッ、
喰らえ、この俺様の華麗かつ残酷きわまりねえ復讐ショットをだな、
withほっかいどおでっかいどおな厳選石でもって、サーブしてやんぜッ!

オラアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

喰らえィッ、この腐れ外道トラック野郎・・・・ッ!!!!!!



ギュイーンッ!と、それこそ音速、
マッハの速さで弾丸のようにビュン!と飛んだ石を、
会心一撃で蹴り飛ばした石を、
サンジは腰に手を当て、ニヒルな笑みで見守った。

あの角度だとアレだ、バックミラーをギュイン!と攻撃まっしぐらだぜ、ヒヒヒヒッ、
あっはっはッッ、苦しめィッ、
後部確認なんざできねえようにしたるッ、がんがん追突られて事故るがいいやッ、
アーッハッハッハッハッハッッ!!! と報復上等な爆笑スマイル。

ギッチリメンチを切りまくった、チンピラホストの面目躍如な悪行。
復讐のしてやったり感にサンジはウットリさんとなっていた。

いやもうこの北海道の山奥でちべたくなって死ぬなら、
せめても追突られ事故りトラックを道連れだぜッ! とか、
もう訳わかんねえトコで満足感を覚えてた。
覚えつつ、朦朧としかかる意識の中で、なんとかその報復成功瞬間をばバッチリ見届けてやんぜ!と
鼻息も荒く必死に立っていた。



すると。



弾丸スピードで飛来する石を、トラックが、よけた。


何ィッ! とサンジもビックラするような超絶流麗ハンドルさばきでもって、
避けた、
と、思ったら、
なんとその先に、

ぴゅーん! 

とキタキツネが飛び出してきて(流石だ北海道)、
そのキタキツネを避けて必死にハンドルをきったトラックは、また元の軌道に近くなり、
でもそれは近いだけで微妙にズレた角度だったので、結局石を避け損ね、
避け損ねて、
避け損ねたどころか、
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!と、
もんのすげえ音をたてて、
トラック側面の壁を、削られた。

石に。

サンジが蹴り飛ばした石に。

弾丸スピードで飛んだ石は、そりゃあ見事に漆黒トラックの側面壁を削ってくれ、削りまくってくれ、
なんか麦わら帽子のマークの入ったトラック黒壁面塗装を、
ギギギギギギーっ!! と一本の鋭い横線殴り書きで、
傷つけてくれちゃったり、した。



あ、ありゃー。


予期してねえハデな方向にいっちまった自分蹴り石の仕事っぷりを、
サンジは呆然と眺めた。
いやバックミラー割るのとドッチがヒデエんだよ、ってハナシだが。
まあでも、どっちがハデかと言えば、横棒傷殴り書き&塗装画一気に目茶苦茶、って方が、
その傷付け時の金属音と共に、ハデに派手でご無体だ。さいあくだ。

い、いやもう、でも、キタキツネにゃ参ったなー、
いやもうもう、困ったオチャメ狐さんだなッ!
そうポリポリとアタマを掻いて、サンジが誤魔化し笑いをエヘエヘ浮かべて、
うーんどうしよっかなあ、逃げちゃおうかなー、
そ、そうしようかなーッ、36計ダッシュるしかず、しかねえような気がするぜ、
いやもう一本道しかないけどー、逃げ隠れがちょいと難しいけどー、とか思ってたらば。


ガチャ、とドアが開いた。


トラックの。


ごっつい安全靴が出てきた。
安全靴の後からは、土方みてえなズボン。
シャツ。
腹巻(腹巻!)。

そして、その土方チックな服装にはもれなく、
ぶっとい二の腕に筋肉みっしりそうな肩腰脚、
そしてそのガタイよりも何よりも危険度高そうな眼光
そらもうバッチバチに危険度が火を噴くほど高ェと一見して判る、
判らなけりゃオカシイってほどの眼光、
ギラリと殺人的な眼光を炯々と放つ、
マジでヤバそうな野郎が付いて出てきた。

まあ要するに、一見してヤバそうな奴が、一見してヤバ気に激怒って、出てきた。


うわ。


うわ。



ああああさっきまでは、餓死&凍死&迷子死寸前だったのに、
今度はなんだか復讐られ惨殺られ原野に埋められ死が見えてきてんですけど・・ッ!!

お、お、おーいいいいいいいいッ、え、え、絵美ちゃああああああああああんんッ!

お、オネガイだからマジ帰ってきて、
ねえオネガイだから速攻で帰ってきて、
な、なんか、キタキツネは避けるのに、俺のことは平気平気屁の屁の河童ァ〜♪で殺しそうな野郎が出てきちゃった、
いやちょっと、ちょっと、本当にどうにかしてよ絵美ちゃんッ・・・・!!!!


ヒキツった笑いを浮かべながら、サンジは一歩も歩けない限界疲労った脚を、
なんとか戦闘態勢に持ち込めるよう、必死で男を睨みつけた。


ガクガクガク、と寒さと餓えとで膝が鳴る。

ざわざわざわ、とサンジの周りで枯れ芒だの枯れ葉だの枯れ枝枯れ草なんかが、騒ぐ。


ヤベエ。



いやもうヤベエ、原野の中の最悪絶体絶命状態迷子・サンジであった。











                           2へ。



爆走!トラック野郎×2

〜つうか今年こそカーナビつけませんか社長・物語〜