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「それ」を手に入れたのは偶然だった。
 
 
 
 
「オフィシャルナビゲーションシステム」と言う製品の、
試作品完成を記念して打たれた、超個人的なキャンペーン。
 
 
鼻の長い、白衣を着た人物に「捕まった男」がこの物語の主人公である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【 プライベート・ボイス 】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
名を聞かれて「ロロノア・ゾロ」と彼は答えた。
 
 
切ったまんまの緑髪、何の変哲もないシャツにジーンズと言う
出で立ちに身を包んだ男は一見、フリーターかと思われたが
 
職場は最近流行のIT企業、意外な事に名刺には「営業主任」と記載されていた。
 
 
 
 
 
「営業主任、っつー事はアレっすか。……車に乗る機会も多い感じ?」
 
 
 
白衣を纏って偉そうなわりには砕けた調子で、鼻の長い男は喋る。
いい加減うざってェアンケートから解放されてェな、と顔に書いてある
ロロノア・ゾロを引き止める為か、長っ鼻は白衣のポケットから
ぬるい缶コーヒーを差し出した。
 
 
 
「あ、お気遣い無く」
「いやいや、こんなトコロでアレなんっすけど、もうちょっとお付き合い下されば」
 
 
 
 
 
場所は中通り一丁目交差点付近。
部下への配慮からやむなく有給を取ったものの、別に行く宛ても無かったから
まァもう少しなら付き合ってやっか、とロロノア・ゾロ氏は缶を開けた。
 
 
ロロノア・ゾロは温くて甘すぎるコーヒーをぐび、っと飲み、
コトのついでみたいな口調で長い鼻の白衣に言った。
 
 
 
 
 
「車には乗るが運転はしねェ。……どうも道に嫌われてるらしい」
 
 
「道に嫌われてる!! へええそうですか、道にねェ……」
 
 
 
 
 
長い鼻の白衣を着た男は何故か大袈裟な感心を示し、怪訝な顔を隠しもしない
ロロノア・ゾロ、に今思い出した様子で名刺を出した。
 
 
 
 
「申し遅れました。俺ァ「ウソップ」職業は「発明家」以後お見知りおきを」
 
 
 
にこりと笑った顔を凝視していたロロノア・ゾロ。
明らかに胡散臭いと思われたのか、突然踵を返したロロノア・ゾロを
ウソップと名乗った怪しい白衣の、長っ鼻な発明家は慌てて押し止め言い訳した。
 
 
 
「いや損はさせねェ料金は無料だ、経費も一切掛からねェ! この作品が市場に
受け入れられるかどうか……あんたにテストを頼みたいんだ、俺の頼みはそれだけだ!」
 
 
 
思いがけず馬鹿力なロロノア・ゾロに引きずられながら、自称発明家はそう叫ぶ。
だがゾロはアンケート用紙を発明家に押しつけて、
彼の言葉を一笑に付した。
 
 
 
 
 
「馬鹿かお前……今時タダほど怖ェモンは存在しねェよ」
 
 
 
 
 
 
「いや怪しい道具じゃ無いんだって! 画期的なナビゲーションシステム、
あんたみてェな男を探してた! あんたなら間違いなくコイツを使いこなせる筈だ!」
 
 
 
 
自称発明家もなかなか手強い。
交差点から近くの公園まで発明家を引きずって来たロロノア・ゾロは
うんざりした表情で、何処か憎めない白衣の発明家に向き直った。
 
 
 
 
「じゃァ五分時間をやる。てっとり早く、簡素に完結しろ」
「ありがてェ! 五分ありゃァ充分だ!」
 
 
 
 
 
自称発明家・ウソップはロロノア・ゾロを公園のベンチに座らせて
彼の手を両手で強く握りしめ、熱い眼差しで語り出した。
 
 
 
 
 
 
彼曰く。
 
 
 
 
 
 
 
 
彼が開発した「オフィシャルナビゲーションシステム」は名前が表するそのままに
自家用または社用車に取り付けられた市販のナビに接続するだけで、完璧な道案内を
可能にする優れた製品らしかった。話を短くするために要約すると以下の通り。
 
 
 
 
 
 
 
@ 「オフィシャルナビゲーションシステム」は試作品につき限定一台
 
A 料金は一切掛からない。だがガソリンやバッテリーの費用に関しては保証しない
 
B 取り付けは自称発明家が自ら行い、工賃・部品等に掛かる費用の請求も無い。
 
C ただし一度取り付けたら他の車に付け替えるコトは不可能だと思え
 
D 仕様に不足・不服を感じたらいつでも返却可能
 
E 試作品使用で通常発生する、定期的な使用報告も不要
 
F 使用に関しての謝礼は商品の発送を以て返させていただきます
 
G 使用期間は三ヶ月。実用新案・特許登録中
 
 
 
 
 
 
「……とまァこんな具合だ。言っとくがこの「オフィシャルナビゲーションシステム」
は未だかつて無い画期的・かつ実用的な製品だ。これさえ手に入ればお前はもう、道に
嫌われる事無く営業に励み、成績も鰻登りに上がるだろう! 間違い無い!!」
 
 
 
 
 
 
ロロノア・ゾロの表情がぴくりと動いた。
どうやら製品に大きな興味を抱いた様だ。
 
 
 
 
自称発明家・ウソップはこの機を逃さず売り込むべし! とばかり
更に熱を入れて製品に対する愛着を語り始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
製品に対する愛着度は熾烈を極め、ロロノア・ゾロがついに
「いいから早くソレ持って来い!」と怒鳴るまで自称発明家は喋り続けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして数時間後。
 
 
有給中だと言うのに会社に出現した営業主任は、生まれ持った奇特な方向音痴の所為で
それまで運転手付きだった特異な営業手段を自ら運転すると言う方向で許可を取り、
社長並びに全社員+食堂のおばちゃんから掃除のパートさんに至るまでを驚かせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
有給は幸いな事に三日ある。
社用車「マックス号」に取り付けられた「オフィシャルナビゲーションシステム」の
不具合を確認するには充分すぎる時間だろう。
 
 
 
粗方説明を聞いた後、自称発明家を名乗った男を背後に残し……
免許を取って、直後自分で運転して事故ってから実に三年十ヶ月ぶりの快挙だった。
 
 
ロロノア・ゾロは数回踏ん張りを聞かせながら、オートマチック車を発進させた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「目的地までおよそ十キロ……ルートの確認を開始します」
 
 
 
 
 
 
 
それまで助手席で、聞くとも無しに聞いていたナビからの自動音声。
がっちりハンドルを握ったロロノア・ゾロに男の声だったか? と
不審がる余裕は全く無い。
 
 
 
「五百メートル先、交差点を右折します。車線にご注意下さい」
 
 
    
 
不意にそう指示が出たが三車線の左端で、車の列は後を絶たない。
通常で言えば申し分の無い距離から指示された案内だったが、
ハンドル歴に空白のあるロロノア・ゾロには遅かった。
 
 
 
 
ぱ・ぱーん、とクラクションを鳴らして右後方からトラックが通る。
斜線を変更する最後の機会はそのアクシデントで無に返り、
ナビは直前まで「右折です」と指示していたが……「マックス号」は
界隈でも有名な、大きい交差点を有り得ないスピードで直進した。
 
 
 
 
「……ルートを変更します。目的地まで十四キロ……次の交差点で右折します」
 
 
 
 
心なしかナビの声が、少しイラっとした雰囲気だった。
 
だが声も出せないロロノア・ゾロは前方の車に付いて行くだけで精一杯。
 
 
 
 
 
「三百メートル先右折です。車線を右に移して下さい」
「わァってるよクソ、俺だって行く気満々なんだ!」
 
 
 
 
 
思わずナビに文句を言い、ハンドルを切ったら車は百八十度回転して
回りに居た車を緊急停止させてしまった。
 
 
それでもよろよろと立ち直り……ロロノア・ゾロは交差点を目指して突っ込んでゆく。
 
 
 
 
 
「二百メートル先左折です」
「右折じゃなかったのかよ!」
 
 
 
 
 
前から車が突っ込んで来て、恐ろしい事この上無い。
しかもナビは指示を変更し、左に曲がれと無理を言う。
 
 
 
思わず怒鳴ったロロノア・ゾロの、形が良い耳の穴に……
突然男の罵声が響いたのは、突っ込んで来たバイクを辛うじてかわしたすぐ後だった。
 
 
 
 
「あっぶねェなこのタコ! てめェが急ハンドル切っから逆走してんだよフザけんな!
分離帯の向こうだクソ、とっとと左に曲がって反対車線に入りやがれ!」
 
 
「……っっ」
 
 
 
 
 
どう言う事かと良く見れば、自分の車は明らかに……流れと逆に猛進している。
 
慌ててハンドルを切ると車はまた大きく回転し、元の方向に収まり止まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これまで剣道やら武道やら……人よりゃ嗜んできた営業主任。
力業で強引に相手をねじ伏せるだけでなく、雄々しく頼もしい人柄を慕われて
ココまで成績を伸ばしてきた。……だがこんなに恐ろしい目に遭ったのは初めてだ。
 
 
 
 
 
呼吸を整えようと深呼吸していると、ナビから陰険な声が響いて来た。
 
 
 
 
「お巡りさんに捕まりてェなら無理言わねェが……渋滞中だぜ主任さん。
てめェなんぞがハンドル持ってたら社会に迷惑だお家に帰れ! 速やかに発進し
前方の交差点をUターンして自宅に戻り、風呂でも入って寝て下さい!」
 
 
 
 
呆気に取られたが取り敢えず車を発進させ、自分の後ろに繋がった車達から
一斉にブーイングを浴びせられて……ロロノア・ゾロの血管がキれた。
 
 
 
 
「やっかましいぞてめェら! 文句あるヤツァ降りて戦え!」
 
 
 
 
 
 
背後はソレで静かになった。
だがナビからは、まだ嫌味な指示が飛び交っている。
 
「ソコUターンだって言ってんだろボケ! 大体てめェ、速度標識に恨みでもあんのか!
ココは一般道、制限速度50キロだぜベイベー、文字読めんのかあァ?」
 
 
 
「うっせェ! 何だてめェさっきからごちゃごちゃ煩ェな! 大体何処にいやがる
勝手に人の車に乗り込むんじゃねえ!」
 
 
「はーい残念でした。ココから自動車専用道路に入りまーす。あーあ、何処行こう
ってんだよてめェ……俺ァナビだよナビ、ナビに従えねェ運転手は滅亡しろ!」
 
 
「ナビ?!」
 
 
 
「あァ。ウソップに付けてもらった……俺ァ「オフィシャルナビゲーションシステム」
商品名は「プライベート・ボイス」愛称はサンジ。プリンスって呼べ」
 
 
「どれが名前だか判るかよ! てめェナビならナビらしく道案内に専念しろ!」
 
 
 
 
「無理だね、ルート外れっちまったもん。まァ腐れた男一人で海見に行こうなんて
悲しい事ァ止めて、阿寒湖に帰れ方向音痴のクソ主任」
 
 
 
 
「てめェちょっと降りろ……たたっ斬ってやる」
 
 
 
 
 
 
 
怒り心頭な営業主任、ロロノア・ゾロ氏は後部座席に保管してある愛刀を
思わず手探りで掴み取り、手元に置いて威嚇を放った。
 
 
 
 
 
 
社用車はそんな会話の間にも、制限速度を遙かに超えて自動車道を爆走する。
昔臨海学校で行った、海岸添いにあったラーメン屋でメシも食うかと思っただけの
目的地だったが……会社からでも僅か三十分ほどの道程が、もう二時間近く経っていて。
 
 
 
「マックス号」はひたすら自動車道を突っ走り、あてのないドライブを続けていた。
 
 
 
 
 
 
「おい」
 
 
 
 
 
 
 
 
瞬きする間も惜しんで前方に目を凝らしていたゾロの耳に
ウザいナビからの音声が入り込む。
 
 
降りろと言ったものの自動車道、停止する訳にもいかず
結局相手にしない事に決め、営業主任ロロノア・ゾロは
帰ったら速攻、この頭に来るナビを鼻の長い自称発明家に突き返すつもりだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「おい聞いてんのかアホマリモ。阿寒湖はそっちじゃねーぞ」
 
 
 
 
 
 
煩ェんだよ。勝手に言ってろへっぽこナビ。
 
そう頭の中で繰り返しつつひたすら運転に集中するロロノア・ゾロ。
 
だがナビは無視に徹するロロノア・ゾロにはお構いなしに
好き勝手な事を言い出した。
 
 
 
 
 
 
「も少し行ったらパーキングがあっからソコに入れ。あ? 左折もできねェ? 
マジですかそれはヤバいんじゃ無いですかー@ 悔しかったら止まってみろ」
 
 
 
このクソ野郎好き放題言いやがって……あの長っ鼻に突き返す時
ついでに真っ二つだ馬鹿め、そん時になって後悔すんなよ!
 
 
 
 
 
それまでの間言いたい事言ってりゃいいぜ、とほくそ笑みながら
でも何でかカラダが勝手に左に向かい……ロロノア・ゾロは
意志に反し、ナビの勧めたパーキングに降りたっていた。
 
 
 
 
 
 
「盗難防止にロックしてけよ? ソコからまっすぐ、ずーっと先まで歩いてみろ。
ちったァ足りねェ頭冷やしてまともに出来っかもしんねーか」
 
 
 
 
ムカついたのでエンジンを切った。
静寂に包まれた車内にひねくれた笑みを残し、誰がてめェなんぞの言うこと聞くか、と
反抗しかけたゾロの鼻腔に……何だか懐かしい、潮の香りが漂って来た。
 
 
 
 
 
 
結局ナビの言う通り、真っ直ぐ歩いてパーキングの……
奥に広がる、展望台へと足を向け。
 
 
 
 
 
 
丁度夕刻に出くわした偶然が、思いがけない景色を彩る。
高台に作られたパーキングから望む景色は夕焼けをバックに染まった海に彩られ
都会に居たら決して拝める事の出来ない……涼やかな情景が広がっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…………」
 
 
 
 
 
 
 
 
知らず口を半開きにして景色に見入る、ロロノア・ゾロの表情は
絶句に値する感動を……顔中に滲ませて嬉しそうだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
こんな夕焼けを見たのはガキの頃以来だ。
……あのナビ太郎、小癪な事しやがって……
 
 
 
 
 
 
 
長時間の運転で、疲れた体をベンチで休め
甘さを抑えた缶コーヒー片手にそれから暫く、ロロノア・ゾロは都会の喧噪を離れ
夕日が海に迎えられて……宵の静けさが訪れる時間を楽しんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「っくしょい!」
 
 
 
 
 
 
エンジンを回した途端作動し始めたナビゲーション。
いきなりのくしゃみで正直驚き、ゾロの体がびくっと揺れた。
 
 
 
 
「しゅ。あー悪ィ、最近冷えっからな〜。もう夏も終わりだな」
「ナビのクセにくしゃみなんかすんじゃねーよ……アホかてめェ」
「アホたァ何だ、聞き捨てならねェな、俺ァ冷え性なんだよ!」
「良い景色だった」
「何をこんにゃろう、俺を一体なんだと思ってやがんだてめェ……ァ?」
「良い景色だったし休養も取れた。ちったァ役に立つじゃねーか」
「………」
 
 
 
 
 
 
お、黙り込んだな。
 
ロロノア・ゾロはそれまで受け入れられなかった、
ナビの本質を見抜いた気がして嬉しくなり、くくっと笑った。
 
 
 
 
「な、何が可笑しい」
「あー別に。それよりルート外れちまったな……お前どっか行きてェトコねえか」
「あ? お、俺?」
「おう。二日後に元の場所に戻ってりゃ問題ねェ。このまま阿寒湖行くか」
「や……阿寒湖は止めとけ無謀すぎらァ。お、俺は別に……その、ナビだし」
 
 
 
 
 
不意にしどろもどろになっちまったナビゲーション……名前はサンジ。
大自然の癒し効果が絶大な効用を与えたのかどうかは不明だが取り敢えず、
戻ってもすぐに突き返すのは止めておこう、と思ってしまった営業主任。
 
ナビの返答を待って出立すべく、エンジンの調子を耳で図る。
 
 
 
 
「俺ァ……」
 
 
サンジの声が心なしか、随分寂しそうな感じがした。
 
 
 
 
 
 
「別にねェや。ソレよりも少し走ったら迂回できるポイントがあっからよ、
ソコから戻って最初に登録した……ラーメン屋でメシでも食え」
 
 
「てめェはそれでイイのか」
 
「俺ァナビだよ。そんな心配は無用だぜ。じゃルート再検索すっからちょっと待ってろ」
 
 
 
 
 
かしゃかしゃ、と音を立て始めたナビ。
引き返し直行する為の最短ルートを、色んな角度から試しているらしく……
画面に映しだされた地図がめまぐるしく変わっていった。
 
 
「もういい」
 
 
 
押し止める声に反応は無い。
それでもゾロは、無言のまま地図表記を繰り返す、ナビに向かって言い放った。
 
 
 
 
「いいって言ってんだろ。車は動かさねェ……今夜はココで寝る」
 
「あ?」
 
 
 
 
地図の回転が止まり、ナビからサンジの声が響いてくる。
 
 
「何言ってんだお前……いくら残暑厳しいからって、こんなトコロで寝ると風邪引くぞ」
「風邪なんか引くかよ。俺よりてめェの方が寒そうだ」
「俺ァナビだって言ってんだろ? ニンゲンと一緒にしてんじゃねェよ」
 
 
カラ笑いするサンジの声。だがくしゃみをした後以降、何だか鼻声なのが気に掛かった。
 
 
 
「それにしちゃァさっきから鼻すすりやがって……てめェこれ掛けてろ」
 
 
 
 
上着を脱いで画面に掛けた。
暫く何の反応も無かったが、十分ほど黙って待ってたら普通の声が車内に響く。
 
 
「あったけェな」
「だろ?」
 
 
 
 
 
 
こんな会話を交わしていると、不思議な事だが相手が機械だなんて思えない。
コレも何かの縁だしな、せっかく知り合ったんだからお前と少し話がしてェ。
 
 
リラックスする為座席を倒し、そんな意志を告げてみたら……
何故か非常に切羽詰まったような、サンジの返答が返って来た。
 
 
 
 
「てめェまさか、こんなトコロで車中泊して……ッ
あわよくば俺を、ドウコウしようって腹じゃねェだろうな!」
 
 
 
 
アホだ。このナビおもしれェ。
 
 
 
ロロノア・ゾロは随分久しぶりに腹の底から大笑いした。
それでナビサンジのご機嫌を多少損ねちまったがそれは、
その後広がった会話には……何の影響も及ぼさなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
夜が更けてもパーキングエリアの一角からは
時折豪快な笑い声が、静まりかえった駐車場に響いていた。
 
偶然入り込んできて不運にも、「○×企画」と書かれた社用車の隣に横付け
してしまった運転手は、中でたった一人、携帯電話も持たずに談笑する、
ぱっと見強面な男に恐怖を感じて速攻車を移動させ。
 
 
 
 
夜が明けて……清掃作業員さんが訪れてパーキング内の清掃に勤しんでたら
前日から止まっていた車の中からこの世のモノとは思えない罵声が聞こえてきたらしい。
 
然しそれも数分の間。車は朝日を受けて走り出し……それ以後そのパーキングには
深夜警備を務めるガードマン詰め所が常設されたとかしないとか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さて話を本編に戻し、こちらは夜明けを待って走り出した社用車「マックス号」
一晩中エンジンをかけっぱなしにして話し込んでた所為でバッテリーに危険が生じた。
 
 
 
 
それを警告するサンジを無視し、ついいつものクセで朝立ちオナニーを始めようとした
営業主任(22歳独身)は、頭の上から「何やってんだクラぁ!」と言う怒声に
はっと我に返って目を覚まし、さらけ出した自分の息子を握り直した。
 
 
「んな事やってる場合か! あと二十秒でバッテリー飛んじまうぞ! 何処でも
イイから走り回って充電しろ、電気回路が遮断されっと俺の命も危ねェんだよ!」
 
「うお、わ、悪ィ!」
 
 
「ソレ仕舞ってからにしろ! 朝から見苦しいモン見せんじゃねェ!」
「見苦しいたぁ何だ! 誰が仕舞うかこのまんま扱きなが走ってやる!」
「うお止めろ、道路交通法違反に凶器準備集合罪だ! ……おいゾロそっちは逆方向だ」
「ソレを早くいえよ! ナビのクセに寝ぼけてんじゃねェぞお前!」
「寝ぼけさせたなぁてめェだろ、一晩中付き合わせやがって……くは……っっ」
「ナビの分際で欠伸すんなよ……本線に入ったぞ」
「そのまま暫く道なりです」
「ナビみてェな事言ってんじゃねーよ。マジ眠そうだなお前……」
 
 
 
ナビの分際で、とかナビのクセにとか言いながら
ナビみたいな事言うなと言う無茶な運転手。
 
 
 
 
 
 
 
社用車はナビサンジの赴くまま高速自動車道に乗り、ゾロは生まれて初めて
料金所経由を経験して……上機嫌なドライブだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「見たろ、俺だってこのくれェの事ぁ出来る」
「はいはい。精々平凡な幸せ噛みしめてろ。……次で降りっからな、
 まだ距離は充分だから今の内に、車線を左側に移しとけよ」
「馬鹿言え、トロい奴らのケツなんか追っかけてられっか」
 
 
 
何事もなく料金所を通過した所為か、ゾロは何時になくハイテンションだ。
あまりにも有頂天になり、制限速度はその時点で三十キロオーバーを指していた。
 
 
 
「おい、飛ばしすぎだ。雨降ってっし……もうちょいスピード落とした方がいい」
「心配性だなてめェは……俺に惚れたんじゃねえだろうな」
「馬鹿かてめェ! 誰が男なんかに惚れっかよ! 俺が好きなのは清楚できゃわゆい
 十代のレディだ……いや待てよ、二十代のお姉さんも捨てがたいし三十代の熟れた
 女体も惜しすぎんな……どうするよ」
「知るか。好きな事言ってろ」
 
 
女好きのナビってなぁ笑えるなあ、と殊更怒りを煽っておいて
それでも足りずにアクセルを踏んだ。
 
 
ぐん、と加速する感覚が背に心地よい。
きんこんかんと警告を発する速度計に逆らって……車は濡れた路面を
危うげな摩擦を生じながら走っていた。
 
 
 
 
 
 
「そろそろ左に入れ。スピード落とせよ」
「あー……まだ大丈夫だろ」
「おい真面目に運転しろ! ゾロ……飛ばしすぎだ!」
「煩ェなーお前」
 
 
 
運転にも随分慣れてきた。標識を見る余裕さえ生まれたゾロの中には
速度や天候に関する危惧は芽生えておらず……
 
 
 
不意に前方、追い越し車線にブレーキランプが迫った時
もう避けられない距離だと言う事に……気付いたのは衝突しちまった後だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 







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