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大の男が二人。エプロンつけつつ台所で泡だて器片手にしゃこしゃことやっていた。こんな光景、普通の人間が見たら卒倒しかねない。不自然以外の何物でもなかった。
「何故俺がこんなことをしなきゃならない」
ぶつくさ良いながらそれでも何とか泡だて器を回す男は、浅生剣吾三十二歳。職業は、内科医、である。
「しゃーないですよ、リクやったんですから」
対して、やんわりと返しているように見え、実は強制的に、浅生に料理をさせている男は、霧生一夜二十八歳。研究職。
「――何が」
「浅生先生にお料理してもらおう、て」
「・・・・・・俺は、料理は――」
ぶつくさと言う浅生の口を布巾で覆って、一夜はにこりと営業スマイルを浮かべた。
「まあ、そう言わず。今日はケーキ作るんですから」
といって、卵をボールに割り入れる。一夜に関しては慣れたもので、ちゃきちゃきと作業を進めていく。
「誰かの誕生日か?」
「そういうわけやないですけど」
浅生は眼鏡を押し上げながら、眉間にしわをよせた。
「ならそんなもん作るな」
「それ言うたら、この話の意味ないですよ」
そういわれては元も子もないと思ったのだろう、浅生は大人しくクリームを書き混ぜる。まだ角は到底たちそうにない。
「――で、どうすれば良いんだ?」
「変わり身早いですねぇ・・・・・・」
「うるせ。別にいいだろ?」
文句ばかりの浅生に一つ溜息をついて、一夜はオーブンを温め始めた。
「良いですけど」
「何か不満でもあんのかよ」
「ないですよ、ただ、」
「ただ?」
「そんな事言っとると、時間なくなるかなぁと思て」
一夜は時計を指差す。時間はもう直ぐ三時である。
「――?」
「浅生さんこれから仕事やないですか」
「ああ、そうだったな。――じゃ、あとは頼む」
「ええ!? それやと意味ないんですよ!」
「何でだ」
(この人、根本分かってないんやないかなぁ・・・・・・)という、一夜の心の声も空しく、浅生は泡だて器を流しに 放り投げ、エプロンを脱ぎ捨てた。
「んだよ」
「何でもないですよ〜(汗)。浅生さん、まだもう少し時間ありますから卵かき混ぜてください。そのくらいならできるでしょう?」
と、言った後で、一夜はしまったと口を閉ざす。思いっきり浅生は一夜を睨んでいた。
浅生は口も悪いし顔も凶悪、下手をすると殺人犯に間違われかねないような風貌をしているので、睨まれると思わず身構えてしまうのだ。
「――俺が料理できないと思ってるな? お前」
「・・・・・・そんなこと、」
「ないとは言い切れないだろ」
「はぁ、まあ・・・・・・」
(何でそんな事尊大に言うんやろ、この人)という心情もすっぱり無視をして、浅生は泡だて器で卵を撹拌中であった。
「――で? 混ぜるのはいいが、混ぜたらどうするんだ?」
「そこにある砂糖を入れてください」
分量はちゃんと測ってあった。だから安心――――と思った一夜が間違いだった。
「ああ、これか」
どばっ。
「・・・・・・」
「その目は何か? 間違ってんのか?」
「えと・・・・・・少しずつ、入れた方が良かったかなー、と」
少しずつ、少しずつ、はお菓子作りの基本である。お菓子はおろか、料理もまともに作れない浅生にとって、この行為は自然・・・・・・・と言ってしまえばそれまでだが、もう少し勉強して欲しかったと思う一夜である。
「先に言え」
「はい・・・・・・」
泣く泣く一夜はケーキ型を用意したり、皿を用意したりし始めた。が、それも物の数分である。
「いつまで掻き混ぜてりゃいいんだ?」
浅生は攪拌に飽きたのか、一夜に尋ねた。
「あー、それ、湯せんしながらまだ混ぜとって下さい。お湯、そこに用意しときましたから」
「湯せん?」
「はい、湯せんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうすりゃいいんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・貸して下さい」
結局こうなるのか、と思わずにはいられない。一夜がボールを受け取ると、浅生は、
「じゃ、俺は仕事だから。後は頼む!」
すちゃっ、とばかりに――逃げた。
「あ、浅生さ――」
行っちゃった。
最終的に、このケーキは一夜が見事に完成させ、皆にふるまわれましたとさ。
結論。
集中力のない浅生に料理をさせてはいけない。
おしまい。
ありがとう、ナギラさん!うわぁい。浅生さんだっ。公式浅生さんだっ。(まるで今までのがまがい物のような…いや、決してそんなことはないです!)
そうだったのだね、こうしてご飯もまずく作られていっていたのだね。さすがです。被害者が痛々しいです(ナヌ)。
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