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     一 序

 

さらさらと流れる。

天の雲。地上の水。そして、衣擦れの音。

もう始まったかしら。弘種様・・・・

姫は緋に染まり始めた天を眺めていた。天は全てに通じている。全ての者が平等に与えられたものの一つ。そう言ったのは誰だったか。姫は今始まろうとしている戦でも見ているだろうと眺めているのだった。

館は殿を筆頭に出陣したために、廃墟のようにさえ感じられる。昼間はまだいい。夜の帳が下りてくれば、檻の中のような冷たさまでが伝わってくる。館は活気を無くしている。戦の準備をしていた時が嘘のようだった。

弘種様・・・

まだ見ぬ愛しい者に想いを馳せ、祈ることしかできない自分が腹立たしい。

「姫様?どちらに?」

いつの間にか目の前に童女が立っていた。館に入ったばかりなのか、新参の侍女であろう。まだ若い。

「あなたはどうしたの?」

童女に視点に合わせるため、姫は座った。座ろうとした瞬間、「どうぞ」と懐から取り出した手ぬぐいを床に敷き、姫を腰掛けさせた。幼いながらにも気配りが細かい。

いい侍女になるわね。

そう思った。

にこりと笑いかけると、鏡のように童女もにこりとした。

が、姫の問いに答えてはいない。姫も目で訴えると、

「私迷ってしまったんです」

笑う顔が崩れ、顔色が悪くなる。まだまだ理性では動けない歳。

赤くなったり青くなったり、まるで天か水面のよう。 照らし出される水面は太陽によってさまざまに趣を変える。夜には月によって。姫はそんなことを考えて童女を見ていた。

可愛い。

ここに仕えて長い同僚の侍女が結ってやったのだろう、まだあどけない童女には不似合いなくらいきちりと結い上げられた髪。その髪には飾りの一つもない。自らの髪に手を伸ばし、花飾りを取って、童女の髪に挿してやった。

「違うの。迷ったんじゃないわ。私がちょっと手伝ってもらいたくてあなたを呼んだのよ。もちろん他の侍女達にも言ってあるわ。手伝ってくれないかしら?」

「え・・?」

「だめ?」

「いいえ!手伝います!」

きっと侍女の頭に怒られることを心配していたのだ。そう姫は感じていた。無論、道に迷ったという事実に恥ずかしさもあっただろう。けれど、侍女の頭が恐いことで評判であることも知っていたのだ。

やっぱり、ね。あの人は恐いからなぁ。私も何度怒られたことか。

姫の場合、姫らしくない。と怒られるのが常だった。乳母ではないが、家を取り仕切る侍女というのはかなりの力を持つ。家に何十年と仕えれば殿や奥方の信任も篤く、重臣達さえ口答え出来ない家もあるそうな。

「何を手伝えばいいでしょうか?」

おずおずと聞いてくる姿が愛らしかった。姫は一人娘。兄弟もいない自分には小さな者から頼られることはなく育った。そのためにとても新鮮な気持ちになるのだった。

姫の目もかまわず、髪に挿された花飾りが気になるらしい。顔をほのかに染めながら、小さな手を恐る恐る触れさせている。伸ばした手が花に触れると、一瞬びくっとするのだが、すぐにますます赤くなってもう一度触れようとするのだった。

「え〜とね。そう!橘の部屋を片付けようと思っていたの」

童女から橘を思い出す。兄弟のいない自分にとって唯一の兄弟。従者で家臣である。けれど、姫にとっては双子の片割れのような存在。

「橘様のお部屋ですか。すぐですものね。参りましょう」

そうは言ったが、実際姫が橘の部屋に来るのは久しぶりだった。

主のいなくなった部屋はどこか寂しげに見える。全てに所定の位置があるのだろうか。整頓された品々が並べられている。姫は見ていて橘の性格を改めて知った。

私のことだけでなく、自分のことまで細かいのねぇ。

「さてと」

どうしよう。

童女に対して掃除と言ってはいたが、これでは掃除をすることも出来ない。童女もそれを感じてか、姫の方を向かず、必死に掃除できる場所を探している。探して掃除・・・それでは掃除とは言わないと思うが・・・。

姫の袖に何かが触れた。と同時に

シャン

と小さな書物が床へ落ちた。

なにかしら・・?

え・・・?これは・・・。

姫の瞳から不意に涙が出た。

 

 

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