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「水月様、もうお休みになられた方が……」

「そうですわっ。昨日もほとんど寝ていらっしゃらないんですから」

 渡殿に腰掛ける彼女に、女房達が次々と声を掛ける。

「否、もう直ぐ高明殿が帰ってくるだろうから、もう少し待っているよ。お前たちは先にお休み」

 ふぅと嘆息し、女房たちは散り散りに去っていく。

 桜の花は、既に盛りを過ぎ、それでも懸命に闇を飾っている。闇に舞うその花達は、一日でも長く咲いてくれと願っている者がいることを知っているだろうか。

「水月殿……」

 小さな声に目を向ければ、そこには一人の男。薄暗い月明かりで、その顔はよく見えなかった。

 桜の中を通り抜け、男は水月の元へ歩いてくる。輝くように高貴なその姿は、しかしいつもの光を宿してはいない。否、その足取りが、いつもより不確かなものだったのは、夜のせいかもしれない。

「そろそろいらっしゃると思っていたのです」

 水月の静かなその声に、胸が震えた。

 いつもより優しげな瞳が、高明の姿をとらえる。真実を映すこの瞳に、自分はどのように写っているのだろう。

 高明は、そのまま小さな体を力一杯抱きしめた。

 どうして彼女はこうなのだろう。こうも自分の心を剥き出しにしてしまうのか。冷たくて、無愛想で、それでもひどく優しい彼女の香りが、高明の胸を一杯にするのだ。張り詰めていた糸が切れてしまう。水月の体は、夜気ですっかり冷え切っていた。

 ―――光の君。

 ―――姫っ!! 何てことを……。今女房達を呼んで参りますから! 気を確かに!!

「水月殿……」

 己の手が震えている。

寒さのためか? それすら良く分からない。

 ふわり、と優しい腕が高明の頭を撫でた。それだけでもう、目頭が熱くなって、抱きしめる腕に更に力を込める。

「水月殿……どうか……」

 ―――光君、どこかに……行ってしまうのですか?

 ―――ここに! ここにおりますよ。

 ―――恐ろしかった……。まるで暁の夢のように、貴方に忘れてられてしまうのが。

 桜が風に狂い舞う。

「どうか……もう少しだけこのままで……」

 水月は何も言わなかった。ただ、抱きしめている小さな体の暖かさが、高明を悲しくするのだ。

「私は――私は酷い男だから……」

 ―――憎まれても、嫌われても、忘れられたくなかった。忘却は……何よりも恐ろしい。

 ―――姫君っ……!!

闇に飲まれてしまいそうになったら、どうか手を差し伸べて。

その紫電の瞳で、私を救い出して。

―――貴方を愛した、愚かな女がいたことを、忘れないでくださいませ。

貴女のためなら、どんな罪でも犯すから。

血だらけの体を引きずって、それでも貴女を護るから。だから、どうか。私の側に――――。

「どうか――許してください」

 ぼやけて月がよく見えない。

 ただ胸の中の温もりだけを感じていた。

 

ゆめよゆめ 恋しき人に逢ひ見すな

          さめてののちに わびしかりけり

 

その昔、叶わぬ恋をした、悲しい女がおりました。 

悲しい女がおりました……。

 

 

 

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