性口為
(せいこうい)
「駄目だよ、祐一。試験近いんだから」
名雪は、そう言って祐一を押し止めた。
名雪と祐一の関係が、従兄妹同士から恋人同士へと変化してから半年余り。ひとつ屋根の下暮らす男女としては当然の成り行きとして、2人は幾度もの蜜時を重ねていた。
今宵も、試験対策として一緒に勉強していた祐一が、さりげなく名雪を抱き寄せ、名雪の首筋へと唇を寄せようとした所だった。
「あれ? おあずけか? つれないなあ」
甘えるように擦り寄ってくる祐一の態度に、名雪もつい相好を崩しそうになる。しかし、名雪は自らを叱咤し、祐一の肩を押し返した。
「駄目だよ。これ以上成績下がったら、交際自体止められちゃうよ」
保護者である秋子からは、2人の交際に関しては何も異存はなかったが、学業への影響だけは避けるように、と釘を刺されていた。
「ちぇ……じゃあさ、キスだけでも、いいか?」
名雪は逡巡した。キスを許せば、その先に済し崩しに移行してしまう危険は充分にあった。何よりも、名雪自身が本心ではそれを望んでいるのだから。
「うーん……だったら、絶対キスだけ、って約束で、だよ?」
名雪は、自らにも言い聞かせるように、そう祐一に告げた。
「分かった。例のジャムに誓って絶対にキスから先には進まない」
「なぜジャムに誓うのかは分からないけど、決意は良く分かったよ」
名雪は、身体の力を抜き、瞳を閉じ、軽く頤を上げた。

祐一の腕が名雪を抱き寄せ、手の平が頤に添えられる。
祐一の唇が名雪の唇に、触れるか触れないかの位置で重ねられた。そのまま、焦らすように祐一の唇は、軽く、軽く、名雪の唇をなぞった。
中々重ね合わせられない祐一の唇を追うように、名雪の唇が僅かに開かれる。その隙間に、祐一の舌先が、やはり触れるか触れないかの強さを保って差し込まれた。
「ん……」
粘膜同士の微妙な擦れ合いに、名雪の背にぞくぞくとした感覚が這い登る。名雪の唇が更に開かれ、吐息を漏らした。
祐一の唇が名雪の唇肉を食む。ぱくり、ぱくり、と小さく、甘く食まれ、名雪の唇は弛緩したように祐一の成すがままになっていた。
祐一の舌先が、名雪の弛緩した唇肉をちろちろと舐める。舌先は、ゆっくり、ゆっくりと、名雪の唇を、舐めあげながら移動していった。
「んっ……んあっ……はぁっ……」
名雪の吐息が甘く乱れる。キスだけを、こんなに焦らされながらじっくりと続けられるのは、名雪にとって未経験の体感だった。
祐一の舌が、だんだんと動きを大胆にしていった。ちろちろとした動きは、いつしかぺろぺろへと、そして、れろれろへと、変貌していた。祐一の舌が、ようやく、名雪の口内へと侵入した。弛緩し、開ききった名雪の口唇は、祐一の舌を何の抵抗も無く受け入れた。
祐一の舌が名雪の舌を絡めとり、弄んだ。祐一の唇は名雪の唇に重ねられ、ぬらぬらと這い回っていた。
「おむ……んむっ……んはぁ……」
切れ切れに漏れる名雪の吐息は、もはや間違えようもなく喘いでいた。
背筋を這い回る、悪寒にも似た快感に、名雪は翻弄されきっていた。
祐一の唇が強く押し付けられ、名雪の舌が吸われた。祐一は、顔の合わさる角度を次々と変えながら、名雪の口内を蹂躙し尽くしていた。祐一の舌が、唇が、荒荒しく、激しく、名雪を嬲り者にしていた。
祐一の背にまわされ、何か掴む物を探す様に這い回っていた名雪の両手が、びくりと動きを止め、ぶるぶると震えながら、祐一の背を引っ掻いた。
ぴちゃぴちゃと濡れた音が部屋に響く中、名雪の全身から力が抜けた。祐一の腕が名雪を支え、そっと名雪の身体を横たえた。
祐一の唇が、涎液の糸を引きながら、ゆっくりと名雪から離れる。名雪の身体は、ぴく、ぴくと僅かに跳ねていた。
「な? キスだけだったろ?」
甘く囁く祐一の声に、名雪は息も絶え絶えに反抗した。
「ばかぁ……こんなに……激しいキス……しちゃったら……」
祐一が、にんまりと意地悪く笑う。
「しちゃったら? 何だ?」
名雪は、祐一にしてやられた事を理解しながら、どうしようもない身体の要求に促され、消え入りそうに、しかし、はっきりと答えた。
「我慢……できなくなっちゃったよ……」
了