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「それは、よかった」
いつもの、内面のうかがえない表情でトロワは言って。
すぐ戻る、とふらりと街へ出て行った。

それは、とは?
なにが、よかったというのか。

俺達が直前までしていたのは、任務の話だ。近頃不穏な動きをうかがわせる組織の内部へふたりがそれぞれ別口から潜入し、協力して調査と工作任務を遂行するという、俺達にとってはごくありきたりな話。
今回はたまたま、トロワが周辺の調査や資材の調達といざというときのためのちょっとした仕掛けを、俺が潜入に必要な人物データの作成や改竄を担当しているのだが。

通常トロワと俺の間では、さほど言葉を必要としない。今回の任務のように、同時に動くことが重要で事前にすりあわせが要る時をのぞいて、互いがあずかり知らぬところで勝手に動いても自然と互いの便宜が図れてしかもハズレがない、という、大変ありがたく頼もしい間柄であるのだ。

これがデュオ相手だと、何かと使い勝手はいい反面察しが悪くて常にひと手間かふた手間を余分に掛けなくてはいけないのが面倒だし、説明が足りないと、あとでぎゃあぎゃあうるさいのが厄介だ。
カトル相手の場合は、奴の性格からか非常に緻密な計画を立てるものの、不測の事態が起こると「君を信じていますから」としゃあしゃあと言って特大のピンチの渦中に堂々と放置されたり、はたまた本人がキレるとその尻拭いにこっちが苦労したりするので気が抜けない。
五飛は・・・・・まず言葉が通じないので、サリィとセットでない任務の時はなるべく遠慮したい相手だ。あれでも先の戦時中に比べたら、だいぶマシにはなってきたけれども。



・・・・余談が長いな。
これもいわゆるひとつの平和ボケというやつだろうか。



とにかく、俺達は、いつでも他の誰よりも、言葉に出さずとも通じ合っているはずで。
それが、だ。
しっかり顔をつきあわせて、珍しくも一から十まであげつらって打ち合わせをしている今日に限って意味不明なトロワの発言と行動に、俺は困惑していた。

現在、情報はすべてデータで管理され、どんなささいなデータでも機密性が最重要視されている。さらに、腹に一物の怪しい組織ならば当然、内部のデータを(今や戦争被害で貴重すぎる資源となった)紙に打ち出したりディスクに落として携帯したりはしないから、パソコンと回線一本有りさえすれば、どこからどうにでもいじれるし、細工にさしたる問題はない。
そもそも名前はもともと偽名だし、現住所も、出身地も、いつでも完璧に、もっともらしくでっちあげてきた。
任務遂行後はきれいさっぱり、なにひとつ記録も痕跡も残さないから、誤魔化す必要のないデータだけは、なんのひねりもなくそのまま使う。
そういう話を、キーをカタカタ言わせながら、戯れにしていたのだ。

例えば、身長、体重、必要ならばスリーサイズに服の号数。
変装していないのならば、髪や瞳や肌の色。
年齢、性別、それから・・・・


「あ」

まさか。
いや、でもきっと。


俺はわかってしまった。トロワの、言葉の意味。

どうしよう。こんなことならわからないままの方が良かった。
通じ合う仲も善し悪しだ、なんて、初めて思ってしまった。


トロワの下調べは既に完璧で、このあたりの住民以上に街に精通している。
たぶんあと五分もしないうちに必要なアイテムの調達を済ませて、この部屋へ戻ってくるに違いない。

隠そうと思って隠していたわけじゃない。ただ、そんなことを改まって話す機会も話す必要もなかっただけだ。だから、自分でもうっかり忘れていた。
出逢ってからもう三年も経ったというのに、これまでちゃんと教えたことがなかった。だからトロワは。

適当に打ち込まれた俺のデータの中で、偽っていないもののひとつ。
本当に。本当にたまたま。それは、今日だったんだ。



「ヒイロ、誕生日おめでとう」



ああ、やっぱりだ。思った通り。
トロワは戻るなりこう言って、恐縮する俺に手渡した小さな包みを開けるようにと目で促した。


俺はその、誕生日を祝ってもらう、なんてことに慣れてないし。
(リボンをむしる)
祝いの言葉だのプレゼントだのは俺達の仲で今さら、と思うと照れくさくて、どうにもいたたまれない。
(包装紙を剥く)
自他共に認める強心臓の俺が、有り得ないほどドキドキしている。まるで夜毎の営み並に。

中身はビロード張りの小箱で、蓋を開ければ細いシルバーのリング。

「ふたつ・・・・?」
「18歳なんだから、ちゃんと既婚者で通るだろう」
「・・・・なるほど」

そこまでは、俺も考えつかなかった。
さすがトロワだ。


想像外の展開に、俺はかえって落ち着いた。不測の事態にいつまでも取り乱していては、エージェントとして失格だ。身についた工作員らしさに色気はないが、この際それはどうでもいい。

即座に指輪をはめ合いキスをして婚姻の事実を調えてから、俺は作成中のふたりのデータに「既婚」の文字を足す。
偽らなくてもいいデータが増えるということは、偽りばかりの人物像に厚みが出てリアリティが増していいことだし、互いに任務中にくだらない虫の出現を気にすることもないので精神衛生上もよい。



日頃何も口にしなくても通じ合えることは素晴らしいが、通じ合う以上の価値のあることを何の気負いもなくさらりとやってくれるトロワを、俺は心から愛している。



END

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